今年5月、欧州のクラブチームが戦う「UEFAチャンピオンズリーグ」で、ドイツのバイエルン・ミュンヘンが12年ぶりに優勝した。英アーセナルやスペインのバルセロナなどの強豪を下して到達した決勝の相手は、同じドイツのボルシア・ドルトムント。ドイツサッカーの黄金期到来を世界に印象づけた。

欧州のクラブチームの大会はバイエルン・ミュンヘンが制した(写真:ロイター/アフロ)

 代表チームは現在、国際サッカー連盟(FIFA)ランキングでスペインに次ぐ2位。来年のワールドカップでも優勝候補に挙げられている。クラブと代表の安定した強さを分析すると、ドイツの企業や経済との共通点が浮かび上がる。

 ベースにあるのが基本戦術の徹底だ。個人技に頼らず、効果的なパスをつないでゴール前につなぐ。勝つために最も合理的な方法を追求し、一度決めたやり方を頑ななまでに貫き通す。そうして自らのスタイルを磨き上げてきた。

 それでもドイツサッカーは、経済と同じように低迷と挫折を味わった。1970年代、ベッケンバウアーを擁するドイツサッカーは黄金時代を迎えた。しかし東西統一後の90年代に壁に突き当たる。欧州などほかの国で、高い個人技を持つ移民系の選手が急激に台頭してきたのだ。ドイツが誇る規律と組織の力が「個」の力で崩され、かつての格下相手に屈辱の敗戦が続いた。

 その苦い経験を機に、ドイツは改革へと舵を切った。ドイツのサッカーに詳しいサッカージャーナリストの湯浅健二氏は「それまでの組織優先から、個人の技術にも重点を置く育成へと切り替えたことで、組織力と技術力の高さを融合させたバランスに優れたスタイルへと進化した」と話す。それは、トルコ系移民の3世、メスト・エジルのようなスター選手の台頭が象徴している。

 基本となる戦術は変えず、多彩な人材を生かすことで変化に対応する。これは、工業製品のモジュール化にも通じる。また、「ブンデスリーガ」ではクラブに対し赤字を許さないルールがあり、リーグ全体の経営が健全。他国のクラブが人件費高騰で経営が傾いているのと対照的だ。この構図は、南欧諸国が財政赤字に苦しむ一方でドイツが財政を健全化させている欧州経済とも重なる。

日経ビジネス2013年12月23日号 45ページより

この記事はシリーズ「特集 強さの秘密 ドイツ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。