大河ドラマ主人公の実像

『黒田官兵衛 「天下を狙った軍師」の実像』
諏訪勝則著
中公新書
819円

 2014年のNHK大河ドラマ主人公の評伝。織田信長、豊臣秀吉らに仕え数々の武功を挙げた姿を描く。高松城水攻めのような奇策を編み出す一方、対外交渉では誠実に粘り強く対処した。千利休らと交わり、茶の湯や和歌に親しむ文化人でもあった。終生キリスト教を信仰し、熱心に宣教師の活動を庇護した意外な一面も紹介。多様な魅力にあふれた名将の実像が明らかになる。

「すべてが最高」は無理

『ハーバード・ビジネス スクールが教える 顧客サービス戦略』
フランセス・フレイ、アン・モリス著、池村千秋訳
日経BP社
2310円

 卓越サービスを実現するにはどのようにビジネスモデルを設計すべきか。ハーバード・ビジネススクール教授らが、「サービスの内容」「コスト構造」「従業員のマネジメントシステム」「顧客のマネジメントシステム」という4つの原則を中心に解説する。

 「すべてが最高」という考え方には無理があると説く。顧客が望む面で上質なサービスを提供するには、それ以外の面で質を落とす覚悟が必要。例えば、米コマースバンクは取り扱う金融商品の種類を絞り込み、預金金利を地域の最低水準に設定する一方で、週7日営業し、接客態度の優れた人材を採用し続け、最も急成長を遂げるリテールバンクになった。

 害虫駆除会社のバグズ・バージャー・バグ・キラーズでは顧客のマネジメントが現場スタッフの主要な仕事の1つとなっている。同社は「害虫を完全に撲滅する」ことを保証する。実践するには害虫がすみにくい場所になるよう顧客も努力することが必要。顧客に対し、駆除プログラムに従うことに同意する書面の提出を義務づけ、従来より頻繁に掃除を行うことなどを定めた行動計画を作成する。

 サービスモデルに適合した企業文化を生む仕組みにも言及する。サービスビジネスのあり方を一から学べる。

本業「消失」との闘い

『魂の経営』
古森重隆著
東洋経済新報社
1680円

 デジタル化に伴い本業の写真フィルム市場が「消失」する危機に直面した富士フイルムホールディングス。会長兼CEO(最高経営責任者)の著者が実行してきた構造改革の全貌を記す。

 著者が社長に就任したのは2000年。翌年から写真フィルム事業は需要が急減し、わずか5年で赤字に転落する。7万人の社員と家族を守るため、著者は写真フィルム事業のリストラを断行。一方、成長が見込めると判断した事業には大胆な投資を行った。中でも液晶パネルの生産に欠かせない「偏光板保護フィルム」はスマートフォン向けなどで需要が拡大。2010年の売上高は2000億円規模となり写真フィルム事業の落ち込みをカバーした。

 写真フィルムの研究開発で培った技術を応用すると同時にM&A(合併・買収)も積極的に活用。「勝ち続ける」ことができる事業領域の強化と、化粧品、医薬品など新分野への進出を進めた。2007年度、写真フィルム事業の売上高はかつての4分の1の約750億円に縮んだが、会社全体の売上高、営業利益は過去最高となった。

 著者は「100回決断する必要があれば、100回とも絶対間違えない覚悟で決断を下した」と振り返る。「負けイコール死」の勝負に賭けたトップの気迫が伝わる。

(文:小林 佳代=ライター)

日経ビジネス2013年12月16日号 70ページより目次