4年ぶりにJ1へ復帰したが、わずか1年でJ2降格となった経営難の大分トリニータ。1年後に6億円弱の債務超過解消が必須の中、事業環境は厳しさを増す。運営会社のトップはチーム存続と再生へ「今は我慢の時」と胸中を明かす。

青野 浩志(あおの・ひろし)氏
1956年、大分県生まれ。79年に長崎県立大学経営学部卒業、新日本証券(現みずほ証券)に入社。82年に大分県庁に入庁。2006年に文化スポーツ振興課参事に就任。2009年9月に大分フットボールクラブ取締役経営企画部長。2010年1月から現職。

 J2降格が決まったのは10月5日ですが、まだ悔しい思いでいっぱいです。人間ですから勝負事は何でも勝ちたい。しかし結果が出た後は、それを経営者として冷静に受け止めるしかない。5年10年を見据えた中長期の戦略を着々と進めていくしかありません。

 あらゆる企業の社長はそういうものだと思います。経営者になると、目先のことに熱くなって戦略がブレてはダメ。ただし、特にフットボールクラブ運営会社は普通の会社と違って人気商売の側面が強く、この兼ね合いが難しい。成績によりすぐサポーターから厳しい声が飛んできますから。

 大分トリニータを運営する大分フットボールクラブ(FC)としては、今の経営再建路線から逸脱すると、また4年前と同じように経営危機に陥ります。そうなったら3度目の経営危機です。それは絶対に避けなければなりません。なので、チーム存続を最優先するため、今季は成績低迷でも戦力補強したい気持ちをぐっと我慢しました。ご存じの通り、我々はまだ6億円近い多額の債務超過状態にありますから。

債務超過解消できなければ…

 直近の経営危機は4年前ですが、何度も経営難に陥るというのは、会社として体をなしていなかったということです。予算管理がきちんとできていない構造的な問題があった。

 短期的な視点で勝ちたいという気持ちに流され、強化に走りすぎた結果、チーム人件費が増えすぎた。ピッチ上の結果ばかりを追い求めていると、会社は行き詰まる。「強いトリニータ」を求める県民の思いは重要ですが、それを資金力に合わない形で実現しようとすると、経営は火の車になります。問題が積み重なり、4年前の2009年時点で問題が噴出し、約12億円の巨額の債務超過という結果となった。

 私は、2回目の経営危機が発覚した直後の2010年1月に社長に就任しました。再生のため、まずはコスト管理を徹底しました。大体年間10億円くらいの売上高の状態で、何が何でも年1億円程度の利益は必ず出すことを自分に課してきました。しかし債務超過は2013年1月期時点で、まだ5億8700万円あります。売り上げ規模からすると、債務は多額です。

 2013年は集客が多数見込めるJ1でのプレーでしたから収入も伸びました。2014年1月期は、売上高が増え13億円台になると思います。例年に比べて増えた約3億円分の売上高が「J1効果」と言えます。

 来季はJ2に降格することになってしまい、メディアの方々は「大分FCの経営が厳しくなる」という論調一色でした。確かに単純に考えれば、3億円分の収入が飛ぶ。J2になると露出が減り、チケット販売や広告収入、分配金なども落ちるからです。しかし、我々からすると経営環境が元に戻るだけなんですよ。きちんと管理して経営すれば、J2の収入規模でもJ1の収入規模でも、最低1億円の利益確保を実現できました。この緊縮財政の状況でも、2012年はプレーオフを勝ち抜いてJ1への復帰を決めるという、ピッチ上の実績まで出すことができています。

 J2降格で経営環境が追い風でないのは事実です。が、今までの取り組みを粛々とやれば、J2に降格しても、いずれJ1に復帰できる期待感はきちんと出していけるはずです。これまでの実績がそれを証明しています。

 Jリーグの「クラブライセンス制度」の決まりでは、3年連続の赤字か、債務超過の状況が続くと、Jクラブとしてのライセンスを剥奪されてしまいます。我々の場合は、2015年1月までに今の債務超過を解消しないとライセンス剥奪となる。チーム存続のため、これだけは避けなければなりません。

 今季、J1に残るためにチームを補強する選択肢もありましたが、そうすると支出が増えてしまい、将来のチーム存続が危うくなります。まずライセンス維持に向け、2015年1月までの債務超過解消を最優先するため、今年はぐっと耐えたわけです。

 ただ、あと1年余りで債務超過を解消しなければならないので、急ぐ必要があります。これは、増資で乗り切る計画です。先に述べましたが、今期はJ1効果で売上高が伸びた一方で支出は抑えたので、1億8000万円程度の利益が出せる見込みです。約5億8700万円の債務超過は、4億円程度に減らせます。この4億円を増資で解消する計画です。

 2014年4月の株主総会の時期をメドに増資すべく、スキームを内部で検討しており12月中には公表予定です。

 まだ個別の企業にはお願いに行っていませんが、大分経済界が引受先のメーンになると思います。地元企業を中心に、最低でも約50社に増資を引き受けてもらう計画です。数多くの企業に幅広く、可能な範囲での増資引き受けのお願いに上がる予定です。

 いざという時に資金面で頼れる責任企業がいない我々のようなクラブは、広く薄く、地元から支持を募るしかありません。応援してくれる地元企業が増えれば、その従業員も支持してくれます。地元の皆さんにそういう気持ちを持ってもらい、「おらが町のクラブ」という意識を地域に根づかせていく必要がある。

 スポンサー企業はピーク時には約600社いましたが、経営危機後の2010年には激減しました。また増えてきて2013年は460~470社に回復しましたが、さらに増やしたい。もっと裾野を広げて「おらが町のクラブ」として認識してもらえない限り、今後は地方クラブは存続できないと思います。

第2の清武弘嗣を生み出す

 来季はJ2上位を目指して戦い、願わくばJ1に1年で復帰したい。債務超過問題を解消でき、クラブライセンス剥奪を回避できれば、その後はチーム補強のアクセルを踏む余裕が出てくる。次に、3度目となるJ1復帰ができた時が勝負だと思います。J1に確実に定着できるチーム作りをするのは、そのタイミングだと思います。

 そのためにも、この2013年の悔しさを忘れないようにしたい。日本代表として活躍するブンデスリーガの清武弘嗣は大分出身です。中高生で構成する大分トリニータの育成組織のチームから、“第2、第3の清武”を次々と輩出して、大分トリニータで活躍してもらいたい。彼らがその後、国内ビッグクラブや欧州リーグに移籍したとしても、大分トリニータへの地元からの支持拡大につながるでしょう。

ホームでの試合に敗北し、スタジアムを埋め尽くすサポーターと向き合う大分トリニータイレブン。2013年5月6日、サガン鳥栖に敗れた時の様子。2013年は、ホームでは1勝もできなかった(写真:日刊スポーツ/アフロ)

 4年ぶりのJ1復帰でしたが、まだ実力不足の面もある。さらに経営的にも無理ができず、J1で最下位となりJ2降格になってしまいました。サポーターや県民の方々には、悔しい思いばかりをさせてしまったことを、本当に申し訳なく思っております。「2013年の我慢があったからこそ、今がある」と言ってもらえるように、3度目のJ1復帰を目指し頑張ります。

日経ビジネス2013年12月16日号 26~27ページより目次

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