高級ブランド市場の成長が目覚ましい。中でも注目を集めているのが、グッチやサンローランを傘下に持つフランスのケリングだ。中小規模の老舗ブランドや歴史の浅い新興ブランドを次々と傘下に収めては成長させていく。効率と非効率を巧みに使い分けた独自の経営術はブランド力の育成に悩むすべての企業に大きなヒントとなる。
自動車から日用品まで、あらゆる産業が伸び悩む世界経済。そんな中、数年来2ケタ成長を続けてきた業界がある。高級ブランドの世界だ。
2000年に約18兆円規模だった高級ブランドの世界市場は、10年余りで30兆円を突破した(米コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニー調べ、1ユーロ=140円で計算)。2013年にはその伸びが鈍化したものの、新興国で爆発的に増える中間層を追い風に、今後も中長期的に市場の拡大が持続することは間違いない。
市場の拡大に伴い、高級ブランドの経営スタイルも一変した。かつては大半が家族経営。代々続く血縁が経営とモノ作りを担い、創業ファミリーの歴史そのものもブランド価値の1つとされてきた。
だが、今のブランドビジネスにその面影はない。1990年代以降、主要ブランドの多くが特定の総合ブランド企業に相次いで買収されたためだ。現在、世界の高級ブランド市場は、あまたのブランドを束ねた3つの巨大グループによって動かされている。
ルイ・ヴィトンなどを持つ仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン、カルティエなどを持つスイスのリシュモン、そしてグッチなどを展開する仏ケリングだ。
中でもケリングの成長は著しい。グッチを買収して高級ブランド市場に入ったのは99年。以来15年足らずで、世界3位の巨大グループにのし上がった。その原動力となっているのがブランドのM&A(合併・買収)だ。中小規模の老舗ブランドや新興ブランドを傘下に収め、その価値を高めていく。
『同質化避け再生する』から、ある老舗ブランドの再生を材料に、ケリング流経営の神髄をひもといていく。
