国内の主要倉庫21社の現状を示す指標から景況感を探る。今夏から荷動きが活発となり、景気回復の底堅さが分かる。一方、円安による原材料高に見舞われる業界は停滞感が強まる。

菊池 峰弘
国土交通省 総合政策局物流政策課 物流産業室 専門官
1991年運輸省(現国土交通省)入省。物流産業室では、倉庫業における調査・統計を担当。今年7月からは当室に新設された災害物流対策官を兼務。

(出所:国土交通省)

 国土交通省がまとめている「営業普通倉庫の実績」は、大手を中心に倉庫業主要21社の状況を示した統計だ。倉庫にどれだけモノが入り、出ていくか。また、荷物の在庫量や回転率など、荷動きの現状を示す指標でもある。

 この指標の特性は遅行性がある点だ。内閣府が月例経済報告で示す景気判断と比べて、2カ月近いタイムラグが生じる。景気の動向によって企業が製品などの製造を抑えたり増やしたりすることから、製品となって倉庫に収まるまでに時間がかかるからだ。感覚的な景気回復度合いよりも、景気の実態をより見極めやすいとも言える。

 例年、春先から夏にかけて物流の量が増えて、夏休み明けに低下。秋口からはクリスマスや年末年始に向けた需要で物量が増え、年明けにまた下がるという線を描く。

 ただ、ここ数年は東日本大震災という災害に見舞われただけでなく、「家電エコポイント」や「エコカー減税」に伴う特需とその反動が表れるなど例年とは異なる動きを示していた。

 リーマンショックが発生するまで毎月の入庫量は最低でも240万トンレベルを維持していたが、世界同時不況によって荷動きは著しく停滞した。2009年1月から2月にかけては、200万トンを切るレベルまで低下。自動車や自動車部品など、倉庫業で中核をなす産業の停滞が影響した。その後、徐々に回復傾向にあるものの、リーマンショック以前の水準である240万トンにまでは戻らない時期が続いている。

消費増税で一時的に底上げも

 アベノミクスによる景気の回復が伝えられているが、現状はどうか。今年7月から変化が見られるようになった。最新の統計数値である今年9月の実績は、入庫量が230万トンで前年同月比7.2%増。出庫量も7.7%増の236万トンとなった。3カ月連続で増えており、荷動きが活発になっている。

 荷動きの中身を40の品目に分類しているが、その多くで前年同月比プラスを維持しており、底堅い景気回復を示している。

 金属製品や電気機械系が比較的好調なのに対して、厳しいのは「紙・パルプ」だ。今年の春頃から前年比マイナスの状況が続く。昨年に比べて円安が大きく進行し、原材料の高騰が日本の製紙企業に襲いかかっている。国内での生産を抑えた結果、倉庫に出入りする数量も減っていると考えられる。

 今後予測されるのは消費増税に向けた動きだ。増税前の特需に対応するために、企業は生産を増やし、在庫を抱えたいと考える。その動きに合わせて、一時的に倉庫の入庫量や保管残高が増えることが見込まれる。

(構成:白壁 達久)

日経ビジネス2013年12月9日号 24ページより目次

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