日本企業によるM&A(合併・買収)で、派手な案件が相次いでいる。

 まずソフトバンクが今年7月、米携帯電話第3位のスプリントを1兆8000億円もの巨費を投じて買収を完了。その2カ月後には半導体製造装置世界3位の東京エレクトロンが世界首位の米アプライドマテリアルズとの経営統合を発表する。

 さらにその数日後には、住設機器大手、LIXIL(リクシル)グループが日本政策投資銀行などとともに、ドイツの同業グローエを約3800億円かけて買収するとぶち上げた。LIXILは2009年に米衛生陶器最大手のアメリカンスタンダードのアジア太平洋部門を買収したのを皮切りに、イタリアの建材大手などを立て続けに傘下に収めてきた。今年8月にはアメリカンスタンダード本体も買収している。

大型のM&Aが相次いでいる
2011年以降の日本企業関連の大型買収・統合
(注:金額は概算)

円安でもペースは落ちず

 「買収を通じて世界展開の基盤ができた。2018年度頃には、本体の成長とM&Aでグループ売上高は3兆円になり、そのうち1兆円は海外の売り上げになると見ている」。一連のM&Aを手がけてきたLIXILの筒井高志・取締役 執行役副社長はこう胸を張る。

 ソフトバンク、LIXILなど、最近立て続けに出てきている大規模案件に共通するのは、対象が海外企業である点だ。2000年後半以降、日本の産業界では国内企業を対象としたM&Aは急減しているが、海外企業の買収は逆に活発になっている。

 下のグラフは、M&A仲介のレコフがまとめた買収金額ベースでのM&Aの動向。国内企業同士のM&Aが右肩下がりに減り続けているのとは対照的に、“越境M&A”はリーマンショックと、その後の世界景気停滞で2009年から2011年まで落ち着いたものの、昨年から再び急増。今年も円安に大きく振れたにもかかわらず、少なくとも10月までは件数ベースで昨年とほぼ同じ水準を続け、買収金額の合計も4兆4000億円に達している。

(出所:レコフの資料を基に本誌作成)

 10月までのM&A金額の15位までを見ると、14件までが国内勢と外国企業の組み合わせ。その大半で買収額は1000億円以上に達した。

 今、“越境M&A”が増えている背景には、言うまでもなく人口減などによって今後、縮小が予想される国内市場から成長の見込める海外市場に軸足を移そうとする国内企業の戦略転換がある。輸出企業はもちろん、食品や通信のような内需型企業も生き残りと成長の機会を求めるには、海外市場へ本格的に進出せざるを得ない。その橋頭堡を短期間で築くため、海外企業相手の大型M&Aに踏み切っているわけだ。

 だが、それも思惑通りに進むとは限らない。華やかな金屏風の前の記者会見で始まった過去の「世紀の合併」「乾坤一擲の大型買収」のその後を追ってみると、浮かんでくるのは多額の損失を計上した失敗の数々と、覆い隠されてきた経営のミスだ。

 企業と日本経済の生き残りのカギとして重要性が増すM&Aを狙い通りに進めるためには、過去の蹉跌を振り返り、そこから教訓をくみ取る必要がある。前編では、海外M&Aでつまずいた3つの実例を見ていこう。

日経ビジネス2013年12月2日号 68~69ページより

この記事はシリーズ「特集 “越境M&A”の成否[前編]」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。