災害対策は「流域」思考で

『「流域地図」の作り方川から地球を考える』
岸 由二著
ちくまプリマー新書
777円

 大型台風やゲリラ豪雨による河川の氾濫、土砂崩れなどの被害が相次ぐ中、治水に新しい視点を提供する1冊。軸になるのは川をベースに雨水が集まる「流域」だ。日本列島を流域で区分けした地図を作ると、行政区分地図とは大きく異なるものが出来上がる。地球の問題に対応するには、自然の切り口である流域単位で考えることが必要だと気づかされる。

デザインは“休み時間”も

『ウラからのぞけばオモテが見える佐藤オオキ nendo10の思考法と行動術』
佐藤オオキ、川上典季子著
日経BP社
1890円

 デザイン、建築の分野で世界中のクライアントを相手に常時250ものプロジェクトを抱えるデザインオフィス「nendo」。人々に新鮮な驚きを与える製品や空間を生み出す秘密を代表の佐藤オオキ氏らが解説する。

 nendoが特に大切にするのが、クライアント企業の特性、ブランド力を強く発信すること。商品を「点」で見せるのではなく、周囲の環境や手に取るカタログなど複数の要素を組み合わせて「面」で伝えることを心がける。エステーの電池式自動消臭スプレーのプロジェクトではパッケージやポスター、POP(店頭販促)、陳列用什器、新製品発表会場もデザインし、エステー社内に新風をもたらした。

 モノ作りでは、その製品を「使用中」の状態だけでなく「休み時間」も考慮したデザインを行う。カレーチェーン「CoCo壱番屋」のキャンペーン用スプーンは樹木の形にデザイン。コップに何本も入れると林や森のように見え、スプーンを使っていない時も視覚的に楽しめるようにした。

 「一歩『下がる』」「『違和感』を生む」などnendoの思考や行動の軸となるキーワードを手がかりにビジネスの着眼点、取り組み方などのヒントが得られる。デザイン実例のカラー写真も豊富で見るのも楽しい。

ソニー、映画会社を救う

『ゴジラで負けてスパイダーマンで勝つわがソニー・ピクチャーズ再生記』
野副正行著
新潮社
1260円

 業界最下位に沈むなど長年、経営が低迷していたソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)。1996年、ソニー本社から送り込まれSPE副社長に就いた著者は、ジョン・キャリー社長(当時)らと、どんぶり勘定で場当たり的なハリウッド流のビジネスを徹底的に改革する。それから17年、SPEはソニーを支える柱の1本となった。再建に向けた苦闘の日々を振り返る。

 著者は映画ビジネスにポートフォリオ理論を組み込んだ。過去の実例を基に大型作品は年に1~2本でジャンルはアクションかSF、主演スターで引っ張る中型作品は5~6本でジャンルはラブロマンスやサスペンスという具合に、利益が最大化する最適な年間のラインアップを考えたのである。

 イベントムービーは続編を作ってシリーズ化すると得られる利益が大きい。シリーズ化を狙って98年に公開したのが「GODZILLA」。ところが、日本版「ゴジラ」と異なる姿形が観客の離反を招き失敗に終わってしまう。代わりに投入し、大成功を収めたのが、複雑な権利関係を解決して制作にこぎ着けた「スパイダーマン」だった。

 特異な市場で様々なアイデアと工夫を凝らしどん底から立て直していく姿が小気味よく、華やかな表舞台の裏側も垣間見られる。

(文:小林 佳代=ライター)

日経ビジネス2013年12月2日号 62ページより目次