心身ともに健康で、充実した人生を歩むためには、夢中で遊び、学び、働くことが大切だと思います。人は皆、自分の中にクリエーティビティーやイノベーションを生み出す「知の泉」を持っています。この泉を広げ深めていくのも、遊びであり、学びであり、仕事です。そして、その源泉にあるのが、好奇心でしょう。

 私が幼い頃から夢中になったものと言えば、賭け事や落語です。メンコやビー玉などを賭けて勝負をすれば、勝つためにはどうすればいいのだろうと考えます。ほかの人と同じことをしていては勝てませんから、知恵を絞って考える。そうして夢中になって遊ぶ中で、運とツキを引き寄せる法則を学びました。これは今、変革が求められている経営環境に立ち向かい、生き残っていくための知恵にも通じています。

 テレビがなかった子供時代、ラジオで聞いて夢中になったのが、落語です。

 私は特に、8代目三笑亭可楽の江戸前の媚びない落語が好きですね。落語は日本語独特の言葉遊びや洒落が面白い。講演で話をする時などには、笑いを取ると集中して聞いてもらえるので、落語の枕やオチといったリズムを意識したり、人と話す時にも駄洒落を言って場を和ませたりしています。

好奇心は若さの秘訣にも

 中学生の頃からは、洋楽も聞くようになりました。エルヴィス・プレスリーがデビューしたのが中学1年生の時。高校3年生の時にはザ・ビートルズが登場。そんなロックンロールの革命が起こった時期でしたから、とにかく夢中になりましたね。

 レコード会社のディレクターかディスクジョッキー、音楽評論家を生業にしようとまで考えて、土曜日の午前中はラジオのFEN(現AFN)で放送されていたビルボードのチャート番組「トップトゥエンティー」を聞くために、学校の授業もさぼっていました。この番組で全米で流行っている曲を聞き、どのアーティストがいつ、どこのレーベルからデビューして、どんな曲でスターになっていったかといった系譜も暗記していたほどでした。そのうちロックだけでは飽き足らず、オペラなどにも幅を広げていきました。

 本を読むにしても、推理小説なら松本清張、アーサー・コナン・ドイル、エドガー・アラン・ポー、アガサ・クリスティと片っ端から読んでいく。そうすると、今度は読んでいるだけではなく、自分で書こうと思えてくるんですよね。私はテレビを見る時にも、ブラウン管の中に入り込んでしまうように夢中になるので、家内にはよく怒られています(笑)。

 そんなふうに、何かに夢中になる時間が多ければ多いほど、人生は豊かになっていくものだと思います。好奇心旺盛な子供のように、何事にも夢中になることは、心身の若さを保つ秘訣にもなるのではないでしょうか。

林野 宏(りんの・ひろし)氏
(写真:山田 愼二)
1942年京都府生まれ。65年埼玉大学文理学部を卒業後、西武百貨店入社。82年西武クレジット(現クレディセゾン)に転職し、2000年から現職。2005~09年まで経済同友会副代表幹事を務めた。

(談話まとめ:田村 知子=フリーランスエディター)

日経ビジネス2013年11月25日号 62ページより目次