来年から始まるNISA(少額投資非課税制度)口座の獲得競争が、証券会社と銀行を中心に繰り広げられている。1人1口座なので、どの金融機関も顧客の抱え込みに熱が入るわけだ。

 今のところ、NISAは5年間の限定措置となっているが、ぜひとも恒久的なものにしてもらいたい。それが、積年の課題である個人マネーの「貯蓄から投資」という流れを促進し、日本経済の活性化に大きく貢献するからだ。

 逆に言えば、現状のままでは大きな効果は期待できそうにない。なぜなら、NISA口座では年間100万円までの投資を5年間、つまり500万円を無税で財産形成に回せるだけのこと。それで盛り上がるのは、これまで株式や投資信託の売買を繰り返してきた、ある程度の金融資産を保有している中高年層だろう。彼らは5年間の税優遇措置を目いっぱい利用するだろうが、若年層が活用するかは疑問が残る。

 だが、恒久措置となると効果は変わってくる。例えば若い世代でも、毎月3万円の積み立て投資ならば乗り気になるかもしれない。それで30年間続ければ、1080万円の長期投資になる。その間の投資リターンを再投資に回せば、複利の雪ダルマ効果で、それなりの財産を作ることも夢ではない。

 仮に、そんな人々が100万人ほど出てくれば、毎年3600億円が30年間にわたって株式市場に流れ込むことになる。すごい経済活性効果となる。

NISAで「貯蓄から投資へ」の流れができるか(写真:時事)

「手数料稼ぎ」は通用しない

 ところで、金融機関は顧客にNISA口座を開設させた後、どんな投資をしてもらうつもりなのだろう。例えば証券会社は、より手数料収入が高い投信の販売にシフトしてきたから、営業マンが個別株投資の勉強を疎かにする傾向がある。一体どこまで株式投資のアドバイスができるか不安が残る。

 銀行などは投信を薦めることになるが、どれほどNISAの趣旨に沿った投信商品を揃えることができるのか。個人の資産形成を手伝う以上、販売手数料を稼ごうとするような投信営業を展開するわけにはいかない。

 そこで、国民ファンドの設定を提案したい。「貯蓄から投資」への流れを推し進めるため、国が20億円を投じて国民ファンド運営会社を設立し、投信業務の認可を取得する。これまでの経験から、国民ファンド運営の投信会社は20億円の資本と10人程度のスタッフで十分やっていける。そして、ファンド・オブ・ファンズ(投信を投資対象にした投信)型の商品を1本だけ設定する。販売手数料は取らず、信託報酬を1%プラス消費税にする。そうすることで、「自分年金」になる。

 販売を希望する民間金融機関や郵便局に、国民ファンドの窓口業務を委託する。金融機関は、預かり資産残高に応じて3カ月ごとに年0.65%の代行手数料を得る。販売手数料は稼げないが、厚い代行手数料収入が見込めるから、預かり資産を積み増そうという方針に舵を切れる。これによって、投信ビジネスの悪しき慣行である新しい投信への乗り換え営業とは一線を画すことができるし、国民ファンドの資産残高を膨らますことを目指す。

 運用は日本株市場での現物株投資に限定したうえで、各投信会社に運用を競わせる。先物やデリバティブを認めず、より多くの預貯金マネーが安定的に日本株市場へ流れ込むようにする。このような仕組みの国民ファンドを設定すれば、個人もNISA口座を利用しやすくなる。NISAが時限立法で終わっても、貯蓄から投資への流れを作り出した大きな実績が残るはずだ。

澤上 篤人(さわかみ・あつと)氏
1947年名古屋市生まれ。スイスの投資会社などに勤務した後、79年からスイス、ピクテ銀行の日本代表。99年にさわかみ投信を設立。

(写真:陶山 勉)

日経ビジネス2013年11月25日号 158ページより目次