アジアでの農業機械販売が好調で、2014年3月期は営業最高益の見込み。だが、それでも満足はしないと言う。年間売上高2兆円に向け、社員の意識改革を訴える。北米で畑作向け大型機を投入。世界最大手の牙城に攻め込む。(聞き手は本誌編集長 山川 龍雄)

(写真:村田 和聡)
益本 康男(ますもと・やすお)氏
1947年、福岡県生まれ。71年京都大学工学部卒業後、久保田鉄工(現クボタ)入社。開発部門を経て宇都宮工場などで生産技術を担当。97年に枚方製造所建設機械製造部長、99年に宇都宮工場長。2002年に取締役、専務、副社長を務め、2009年に社長に就任。2011年から現職。週末は可能な限りラグビー部の試合の応援に駆けつけている。

「遊べ、遊べ」と社員にハッパ
挑戦心をなくしたら面白くない
増益で満足してはダメ

 問 社長に就任した5年前から増益基調で、今期も過去最高益を更新する見込みです。堅調に業容を拡大しているように見えます。

 答 まだまだ。前期と比べて上回っているとはいっても、(以前の)自分と戦ったら勝つに決まってますよ。本来、自分がありたい姿を目指さないといけない。

 前期比で増えたことで満足している社員に対しては、「ちいとは周りを見ろよ」と言っています。この10年間、クボタの売上高は年1兆円強で、大きく変わっていません。

 それに対して、10年前に1兆円強だったコマツの売上高は今やおよそ2兆円。10年前に6000億円程度だったダイキン工業は、当社とほぼ同じ規模になっています。日本の企業でも当たり前のように売上高が倍になっているんです。社員は利益が増えているとか、いいところだけを見ようとする。

 現状に疑問を持たない社員が多いのは、当社には良くも悪くも本当につぶれるかどうかという瀬戸際の経験がないからです。だから、「何を成し遂げてきたか」と社員に問うと、「分かりません」という答えが返ってくる。ほかの人 に説明できない成功体験を作り上げているだけでは、それを事業に生かすことはできません。

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