世界で投資マネーの2極化が一段と鮮明になっている。新興国株や国際商品から流出し、先進国の株価を支えている。ただアベノミクス期待がしぼめば日本は取り残されかねない。

高井 裕之
住友商事総合研究所社長
1958年生まれ。80年神戸大学卒、住友商事入社。ロンドン駐在を経て金融、エネルギーの各事業本部長を歴任。2013年4月から現職。資源、マネーからの大局的な経済分析に定評がある。

 投資マネーのダイナミズムは実体経済に1~2年ほど先行する傾向がある。先進国と新興国の株式をそれぞれまとめた総合指数、原油や銅などの国際商品市況を比較すると、ここ最近では2つの転換点が浮かび上がる。米国の量的金融緩和第2弾(QE2)が終わった2011年6月と、再び米国が量的緩和第3弾(QE3)を打ち出した2012年9月だ。

 QE2の局面では3つの指数が揃って上昇していたのに対し、今回は先進国の株式のみが上がっている。2010年初めと比べても、先進国株は3割ほど高い。牽引役が日米、さらにドイツと揃ったのが大きい。

 新興国の株式と国際商品市況は揃って下落に歯止めがかからない。既に2010年初頭の水準を下回っている。

 足元は3つ目の転換点を迎えているように思われる。先進国と新興国の株式、国際商品市況の中でそれぞれ選別が進み始めたからだ。

 先進国では、引き続きQE3の継続観測や好調な企業業績を追い風に米国に資金が集まりそうだ。ユーロ圏も最悪期は脱している。懸念すべきは、円安効果とアベノミクスへの期待がしぼみつつある日本だろう。

 確かに日本株は円安による企業業績の改善期待で底堅い。ただ、米国で政府債務の上限問題と金融緩和縮小が先送りとなり、頼みの円安にブレーキがかかっている。消費税引き上げもあり、成長戦略をうたう「第3の矢」がもたつくようならば、欧米株が上昇しても日本株は取り残されかねない。

注:先進国と新興国の株式はMSCIの各指数、国際商品市況はロイター・ジェフリーズCRB指数。 2010年1月を100として指数化

「中国依存度」で新興国も2極化

 新興国はどうか。外貨準備高や経常収支などの経済指標に加えて、資源価格と中国依存度、それに政治の安定度に応じて投資マネーの流れが変わりそうだ。

 例えば、マレーシアやタイは中国への輸出額がGDP(国内総生産)比で10%前後と比較的高い。それでも農産品や自動車関連など、資源以外が大半を占めるため総じて経済指標は底堅い。

 ペルーや南アフリカ共和国、インドネシアなどは中国への輸出がGDP比で3%程度にとどまるものの、非鉄金属などの資源比率が高い。資源価格次第で成長余力が限られる懸念が残る。

 ロシアは原油、ガス価格に左右されるが財政面では不安が小さい。中国は構造改革を優先する「リコノミクス」を進める中で、どれくらい経済成長が犠牲になるかが焦点になる。

 もっとも、中国依存度の比較的低い原油を除けば、非鉄金属や鉄鉱石などの国際商品市況は過去10年にわたる資源バブルの後遺症が続きそう。当面は供給過多と過剰な在庫にさらされるだろう。

(構成:清水 崇史)

日経ビジネス2013年11月11日号 24ページより目次

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