小学生に「音」を徹底教育

『国際的日本人が生まれる教室』
中原 徹(なかはら・とおる)
祥伝社 1575円

 著者は、日米で弁護士を務めた後、2010年から全国最年少校長として大阪府の高校に赴任して話題になった人物だ。帯に大きく「最年少校長の高校グローバル革命」とうたわれているように、本書は自身の校長体験も踏まえて、「グローバル人材」育成のための教育改革を提案するもの。そのための必須条件としてまず著者が挙げるのが「英語力」の向上だ。

 ところが現状は、TOEFL(英語能力テスト)や自身の体験からも、日本人の英語力は中国、韓国、台湾に置いていかれる一方。著者は、英語力が向上しない理由について、文法構造や発音の違いに加えて、小学校での英語教育が充実していないこと、大学入試までの英語のテストが実践的でないことを指摘する。

 現在の小学校の英語教育で設定されている「外国語(英語)に親しむ」という目標は中途半端であり、「実践的な英語を使えるための基礎力の強化」を明確に目標として打ち出すことが必要だという。具体的には、「英語で用いられるすべての『音』を小学生に学んでもらい、これらの音を聞ける、発音できる、書ける(綴れる)ようにすること」を徹底すべきと提案。さらに中学・高校ではTOEFLを中心にした学習内容にせよ、とも。

 大胆な改革案ゆえ正規カリキュラム化への道は遠い。そこで現在は、課外授業として自身の高校で「英語超人」なるTOEFLクラスを立ち上げるなど、現場からの「ゲリラ活動」を展開中だ。

中学生にリソースを投入せよ

『危うし! 小学校英語』
鳥飼 玖美子(とりかい・くみこ)
文春新書 767円

 同時通訳者としても英語の教育者としても、第一線で活躍してきた著者だが、早期英語教育には否定的だ。

 調査結果を見ても、小学校で英語を学んだ子と学ばない子との英語力の伸びに有意な差はない。加えて、小学生ぐらいの時期だと、ちょっとしたきっかけで「自分はできない」と思い込み、中学入学以前に英語に劣等感を抱く児童が出てきてしまうとも懸念する。

 著者によれば、そもそも「小学校英語」必修化という政策は、現場の教師の声には耳を傾けず、もっぱら親に代表される「世論」と「産業界の意向」で決まった側面が強い。しかし現場の教師もやみくもに反対しているのではない。彼らが反対する具体的な理由は、「誰が教えるのか」という問題が、全くクリアされていないからだという。

 無論、著者も現状肯定ではない。本書で示される改革案は、抽象的な思考能力が備わり、柔軟性や吸収力もある中学生の時期に、リソースを重点的に投入すべきというもの。具体的には、現行の週3時間を6時間に倍増。そのために教師も増やし、少人数クラスを実現する必要があると主張する。一方、小学校では英語にとらわれない「ことばの体験学習」や「異文化」への開かれた心を育てるような教育が望ましい、と。

 実践と教育双方に通じる著者だけあって、提案する学習内容も、文法や読解を疎かにしないバランスの取れたものとなっている。

(企画・文:連結社)
(写真:スタジオキャスパー)

日経ビジネス2013年11月11日号 60ページより目次