今号の特集に登場する日本電産の永守重信社長のエピソードを読んで、15年ほど前に取材した時のことが蘇りました。永守社長は当時、休日になると関連会社の幹部などの報告書を片っ端から読み、叱咤激励のファクスを送っていました。従業員の間で「紙爆弾」と呼ばれていたこの習慣は、形態こそ大部分がファクスからメールに変わったようですが、今も続いています。しかも当時約60社だったグループ会社の数は230に拡大。週末はほぼこの業務に没頭しているそうです。

 そんな永守社長が当時、日本の社長の発言に「納得できない」と、怒っていたことを思い出しました。新聞記者などに自分の会社の株価が「妥当か」と聞かれて、多くの社長が「実態に比べて評価が低い。安すぎる」と答えていたことでした。「安いと思ったら自分で株を買えばいい。社長が買わないような株は誰も買わない」。永守社長は企業を買収する際、必ず自分がその会社の個人筆頭株主になると決めていました。一心不乱に業績向上に邁進するよう、自らを追い込むためでした。

 齢(よわい)69。日本電産のリスクは、永守社長自身の健康であり、後継者問題だと思います。ただ、それを軽々しく言うのもはばかられるほど、永守社長の仕事ぶりには気迫を感じます。日経ビジネスが生んだキーワード「会社の寿命は30年」。特集を組んだのは1983年。今からちょうど30年前になります。節目の年に、改めて企業を永続させる条件について考えてみました。組織にいかに創業者精神を埋め込んでいくか。これが企業“抗齢化”のカギを握っています。

(山川 龍雄)

日経ビジネス2013年11月4日号 1ページより目次

この記事はシリーズ「編集長の視点」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。