「消費増税分は社会保障に使うので、将来の給付として国民に返すことになる」。政府は長い目で見れば、年金や介護などの形で増税に見合う受益が見込めると説明する。だが、来年4月に家計が直面するのは本格的な負担増。依然として賃金が伸び悩む中、家計を守る術を今から考える必要がある。

 消費税が3%上がると毎月の支出はどれだけ増えるのだろうか――。第一生命経済研究所によれば、夫婦と子供2人の片働き世帯をモデルに年間の負担増額を試算すると、年収600万~800万円の場合は約8万~9万円、1000万円を超えると11万円となる。そして、2015年にさらに2%の増税が予定通りに行われれば、負担額は11万~18万円とさらにアップする。「消費増税分だけで毎月1万円程度支出が増えるイメージ」と、ファイナンシャルプランナーの花輪陽子氏は話す。

 現役世代の家計は消費増税以外にも負担増に見舞われている。厚生年金保険料は2017年まで毎年0.354%上がるほか、今年1月からは復興特別所得税が所得税率に2.1%上乗せされている。これは2037年まで続く予定だ。

 子供を持つ世帯に対しては、児童手当に所得制限がかかり、所得税・住民税の年少扶養控除が廃止された。

注:消費税5%の時と比べた負担増額。総務省「家計調査(2012年)」を基に第一生命経済研究所が試算。夫婦と子供2人の片働き世帯がモデルケース
POINT
年収が多い人ほど消費水準も高くなるため、金額ベースで見た税負担は高収入世帯ほど大きい。しかし、年収に対する税負担の割合が多くなるのは低所得世帯。消費税は所得が低い人ほど負担を感じやすい「逆進性」がある。

大きな支出減らせば長続きする

 負担は確かに増える。だが、極端な節約に走るのは禁物だ。「外食を一切やめてしまうなど、1つの項目に偏った節約は長続きしない」と、これまで数多くの家計相談を手がけてきた家計再生コンサルタントの横山光昭氏は話す。「何を削るか」ではなく、「全体から少しずつ」節約することが、生活レベルを落とさない家計の見直しにつながるという。

 とりわけ、毎月一定額がかかる固定費は、いったん削減してしまえば効果が長続きするだけに真っ先に検討したい。まずは住宅ローン。一定額の貯蓄があれば、総返済額を減らすためにも繰り上げ返済を前向きに考えたい。ローン残高が1000万円以上、返済期間が残り10年以上ある場合は、利息を減らすために借り換えを考えるのも手だ。「借り換えは、新規でローンを組むのと同じくらい手間がかかる作業だが効果も大きい」(花輪氏)。

 通信費も侮れない支出だ。スマートフォンなどの端末契約時に何気なく加入した月額300~500円のオプション契約はないだろうか。多い人は月1000円以上オプション料金を払っている。留守番電話サービスや指定した番号への電話料金割引、地図情報サービスが本当に必要か見直してはどうだろう。家族分も含めれば、月3000~4000円の節約になるケースもある。

 生命保険料は非課税のため消費税はかからないが、保障内容を見直すだけで生活に大きな影響を与えずに支出を抑えられる。月1万円以上節約することも可能だ。特約などの必要ない保障を取り除く、掛け捨て型の保険にするなどの方法を検討したい。「『ネット生保』と呼ばれるインターネット保険ならば、大手生保の商品と比べて保険料は半分程度で済む」(花輪氏)。

 固定費の見直しが済んだら、毎月の支出を「消費」「浪費」「投資」の3つに分けて評価する。「無駄な支出が明らかになる」と横山氏が勧める方法だ。

 「消費」は、食費や住居費、光熱費といった生活に必要な支出だ。「浪費」は、お酒やたばこ、コーヒーや程度を超えた買い物、ギャンブルなど。そして「投資」は習い事、塾代、貯金など将来につながる支出だ。

 分類に迷ったら、その支出の「価値」を考えてみるとよい。例えば携帯電話は生活に必要な「消費」だが、過度の長電話は「浪費」となる。子供のためを思ってやらせている習い事も、子供が積極的でなければ長い目で見ると「浪費」となる。こうやって必要でないものを「見える化」していく。横山氏は「消費70%、浪費5%、投資25%の割合に収めるのが理想」と話す。

注:花輪陽子氏、横山光昭氏のアドバイスを基に編集部作成(写真:iStockphoto)

「資産全体を年1~2%増やす」

 固定費などの大きな支出項目を見直し、浪費を抑える。これだけで「月1万円の節約は可能」と、横山氏、花輪氏は話す。さらに、将来の収入減・負担増を見据えた資産運用を考えると、より確実だ。

 足元の消費者物価が上昇するなど、インフレの兆しも見え始めている。横山氏は「資産全体を年に1~2%程度増やすことを目標に運用してみては」とアドバイスする。運用はリスクを伴うが、指数に連動するインデックスファンドを選んだり、積み立てを活用したりするなどしてリスクを抑えることはできる。物価連動国債ファンドなど物価上昇に対応する商品もある。

 節約と資産運用を併せた方法で、無理なく3%の増税に備えたい。

日経ビジネス2013年10月28日号 48~49ページより

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