「架空の航空機」を飛ばす

『ナウシカの飛行具、作ってみた発想・制作・離陸― メーヴェが飛ぶまでの10年間』
八谷和彦、猪谷千香、あさりよしとお著
幻冬舎
1470円

 メールソフト「ポストペット」の生みの親が「風の谷のナウシカ」に登場する架空の1人乗り航空機の製作・飛行に挑んだ10年間を振り返る。2分の1サイズ模型から実機へ、人力によるゴム索曳航からジェットエンジン搭載へと夢が実現する過程は興味深い。「作ってみたい」という素朴な動機が生む熱意と努力にモノ作りの原点を見る思いがする。

機会の格差を消せるか

『「機会不均等」論 人は格差を背負って生まれてくる?』
橘木俊詔著
PHP研究所
1470円

 結果の格差ではなく、機会の格差に焦点を当て、現実に起きていることと、その思想的・経済学的な背景を論じる。男女、教育、世代、地域間や家族構成における機会格差を取り上げる。

 男女雇用機会均等法施行から四半世紀が過ぎ、女性の労働環境は改善が進んだ。だが、依然として総合職の門戸は狭く、女性間では激しい競争が生じている。男性に一般職がないことも女性から見ると差別に映る。女性労働者の50%以上が、正規雇用者に比べて賃金が安く、雇用が不安定で昇進・昇格の機会も乏しい非正規雇用者であることも問題が大きいと説明する。

 「皆婚社会」と言われた日本だが、1980年あたりから晩婚化、非婚化が目立ってきた。調査では「適当な相手にめぐり会わない」という理由が最も多い。出会いの機会減少は、非正規労働者が増え、職場内の一体感が弱まったことも一因と考えられる。「結婚資金が足りない」「住居のめどがたたない」など低所得も壁になっており、若者の雇用促進、技能の付与、最低賃金アップ、正規・非正規雇用者間の格差縮小などの政策が求められるとする。

 機会平等と効率性、費用との兼ね合いも考察。公平性と効率性の犠牲ができるだけ小さい社会、経済が達成されるべきと指摘する。

ファン活用の事例と手法

『アンバサダーマーケティング 熱きファンを戦力に変える新戦略』
ロブ・フュジェッタ著、土方奈美訳
日経BP社
1890円

 アンバサダーとは自社の商品やサービスを気に入り、SNS(交流サイト)や口コミで魅力をアピールしたり、見込み客を紹介してくれる熱心なファン。アンバサダーを武器とする企業の最新のマーケティング事例と手法を示す。

 ネット上のファイル共有サービスを提供する米ベンチャー企業ボックスは2万5000人から成る「アンバサダー部隊」を組成。プロモーション情報をシェアするよう促し、6週間でボックスのサイトへのクリックを1万6350件誘導した。ゼネラル・モーターズ(GM)グループでSUV(多目的スポーツ車)、トラックなどを生産するGMCは2万5000人のアンバサダーにオーナーとしての体験談を書く機会を提供した。寄せられた件数は3000件。20%がSNSでシェアしたため、数千人に信頼性の高い有益なメッセージを届けることができた。

 アンバサダー・マーケティングの「発掘」「活性化」「動員」「追跡」という4段階ごとに、具体的に何をすべきかも詳しく解説する。アンバサダーとは継続的な対話や啓蒙を通じて持続的な関係を構築することが重要。お礼はすべきだが、報酬を支払ってはいけないといった留意点も示す。マーケティングの新潮流を理解し、実践するのに役立つだろう。

(文:小林 佳代=ライター)

日経ビジネス2013年10月21日号 56ページより目次