「オムツ替えは父親として当然のこと」。2週間の育児休暇を取った英ウィリアム王子は、米CNNのインタビューで臆面もなく“イクメン(子育てに積極参加する男性)”ぶりを語った。

 ジョージ王子退院の時には、チャイルドシートをクルマにセットして自ら運転し、王室の近代化を印象づけた。

英ウィリアム王子は2週間の育休を取得した(写真:Getty Images)

 さて、今回のテーマは、「なぜ日本の男性は育休を取らないか」である。少子化対策の効果が上がらず、育児休業が法律で定められてから20年以上経っても、男性の育休取得者は一向に増えない。厚生労働省によると女性83.6%に対し、男性1.89%。男女共同参画社会において、この男女差は「最大の格差」と言っていい。女性の社会進出は顕著に増えても、男性の育児進出は“遅々(父)として進まず”である。

 要因としては、日本の長時間労働がある。特に働き盛りの30代男性は取りたくても取れないのが実態だろう。安倍政権の「3年育休」が不評なのは、男性の育児参加環境こそ見直すべきだったのに、そこを見誤ったためである。

 私はこれまで長年、女性の社会進出の現場を見てきて分かったことがある。女性の問題とされていることが、実は男性に起因していることが多い。先進国の中で、いまだに30代女性の就業率が低い「M字型就業」で、出産・育児を理由に仕事を辞める女性が54.1%に上るのはなぜか。高等教育比率は男女ともに高いのに、男女平等度で世界101位というのはなぜか。

 女性の意識は大きく変わってきているのに、企業内の男性の意識がなかなか変わっていないからである。

立ちはだかる男性上司

 女性が出産後に働きたいと思っていても、立ちはだかるのは男性上司だ。「子供が3歳になるまでは、母親がそばにいてほしい」と「3歳神話」を持ち出す上司がかつては結構いた。それでも、まだ女性たちは以前よりはるかに育休を取って、ワーキングマザーが珍しくないところまで歩を進めてきた。

 職場で周囲にしわ寄せが及ぶ育休取得に後ろめたさはあったが、女性同士は「お互いさま」と思い、やってこれた。

 問題は男性である。これほど育休を取らないと、「お互いさま」とはいかない。子育てに関わりたいと願う男性が増えても、多くの男性の育休取得者を特別視している限り、取りにくい。

 かつて、3歳神話で女性の育休を阻んできた上司は、男性の育休希望者に対してきっとこう言うに違いない。

 「オムツを替えるより、ミルク代を稼ぐのが男の役割だよ」と。

 ノルウェーの「パパ・クオータ(父親割り当て)」制度は、子供が3歳に達するまでの14週間(夫婦で最長59週間)の休業を、父親に割り当てるもので、1993年に施行され拡充されてきた。北欧諸国は男女平等度がトップクラスなのに、制度導入前は男性の育休取得率がわずか4%程度だった。これが制度導入後の94年は42%に急増し、2003年には9割に達している。

 北欧でも男性の育児参加には制度のインパクトが必要だったのである。また、1人目の育児に夫が参加した夫婦ほど、第2子が生まれやすいという調査結果もあり、少子化対策は男性の育児参加が不可欠なのである。

 「男性の育児参加」が、「女性の活躍の場の拡大」につながり、ひいては「少子化対策」にもなる。この三段論法は至って明快で、企業がそこに一石を投じることは、従業員の活力を高め、未来につながる最高の社会貢献となる。一石三鳥の道を、放っておくのはあまりにももったいない。

松永 真理(まつなが・まり)氏
明治大学文学部仏文科卒業後、リクルート入社。「就職ジャーナル」編集長などを歴任後、NTTドコモ入社。iモードの企画開発に携わる。2012年から現職。

日経ビジネス2013年10月14日号 128ページより目次