「この夏は異常気象だった」。気象庁の異常気象分析検討会は9月、今夏の気候についてそう発言した。全国927の観測点のうち125地点では最高気温を更新し、18地点はタイ記録。74地点で最低気温を更新した。さらに高知県四万十市では国内観測史上で最も高い気温となる41度に達した。

 気温ばかりではない。秋田や岩手、島根などで過去に経験のないような豪雨に見舞われた。一方で、本州太平洋側や九州南部の一部では記録的な少雨となった。関東では竜巻などの被害も相次ぎ、これまでにない災害対策の必要性に迫られている。

今夏、日本各地で高温や豪雨などの異常気象が続いた(写真:読売新聞/アフロ)

 この異常気象の原因について、検討会は地球温暖化の影響と発表した。だが我々のように自然と対峙する農業従事者にとって、温暖化はかねて深刻な問題として捉えられていた。

 例えば、作物の栽培時期。私の住む群馬県昭和村では8月半ばから8月下旬の間に白菜を植えつけていた。お盆を過ぎ、暑さが和らぐ時期でないと白菜は育たないからだ。しかし、ここ数年は、その時期が半月も後ろ倒しされ、9月初旬から9月半ばになっている。

 暑さが激しくなる一方で、それが過ぎると途端に寒さが増す。そのため今まで秋口に植えていたブロッコリーなどは、「もう少し涼しくなってから」と時機を見計らっていると、植えつけのタイミングを逸してしまう。つまり農業従事者にとっては、頭を抱える気候が続いているのだ。

2020年、再エネ大国へ

 今年5月、米国ハワイのマウナロア観測所では大気中の二酸化炭素濃度が、1958年の観測以来の最高値に達した。二酸化炭素を含む温暖化ガスの濃度が深刻な被害をもたらすギリギリの数値に近づいている。日本だけでなく、世界中で問題になっている。

 実際、世界各地の農業従事者と情報交換しても同じ問題意識を持っていた。タイの農村部ではここ数年で一気に気候が変わり、深刻な干魃に悩まされるという。今年訪れたドイツでも、ここ数年の異常気象に対する不安を、地元の農家が口にした。

 世界各国の農業従事者が以前から懸念していた温暖化問題が、ようやく一般の人々の間で認識されつつある。特に日本では今年、それを意識した人が多いはずだ。

 異常気象によって、誰もが地球の異変を感じた今夏。今こそエネルギーのあり方を見直す好機ではないだろうか。

 東日本大震災以降、日本では原子力発電の信頼性が完全に失われた。さらに9月半ばには関西電力大飯原発4号機が定期検査に入り、全国50基の原発はすべて稼働を停止している。

 私自身は決して原発推進派ではない。だが、原発が止まった代わりに化石燃料による発電が増えて、温暖化をより深刻にしていることも事実であろう。化石燃料に頼り続ければ、今後も温暖化による深刻な異常気象は、悪化の一途をたどるはずだ。

 であれば今こそ改めて、再生エネルギーへのシフトを進め、抜本的なエネルギー対策に乗り出すべきではないか。震災後、国は様々な施策によって、再生エネルギーの普及を進めている。だが、まだできることは多い。

 2020年には東京五輪が開催される。ここを目標に、日本を再生エネルギーの先端国にする。再生エネルギーのあり方を、日本から世界に発信する好機にすべきだ。今夏の被害を再生エネルギー普及に繋(つな)げたいものだ。「今年はたまたま異常気象だった」などという結論で終わらせてはならない。

澤浦 彰治(さわうら・しょうじ)氏
1964年群馬県昭和村生まれ。高校卒業後、家業の農家を継ぐ。92年に有機野菜生産グループを立ち上げるなど、早くから大規模栽培に取り組んできた。

日経ビジネス2013年10月7日号 142ページより目次