今年に入って1世帯当たりの牛肉の月間支出金額が増えている。アベノミクス効果に加え米国産牛肉の規制緩和も影響。輸入増加に伴い、食べ方もバラエティーに富んできた。

小嶋 定紘
エバラ食品工業 マーケティング部 チーフ
横浜市立大学卒。2001年入社。家庭用営業、情報システム、経営企画部門を経て、2011年から現職。家庭用商品の売れ筋のヒントを探るべく、評判の肉料理の店に積極的に足を運ぶ。

 アベノミクスによる消費者心理の改善で、牛肉の消費が増えている。総務省が8月30日に発表した7月の家計調査によれば、2人以上世帯の1カ月当たりの牛肉支出金額は1476円と前年同月比で8%増えた。今年に入ってから7カ月連続で前年を上回っている。

 要因は、財布のひもが緩んでいること以外にもある。2013年2月、政府はBSE(牛海綿状脳症)問題に関連して実施していた米国産牛肉の輸入規制を、牛の月齢で「20カ月以下」から「30カ月以下」に緩和した。輸入増加で牛肉の流通量が増えたうえに、手頃な価格で手に入るようになった。

 豚肉、鶏肉に比べて価格の高い牛肉は、長引く不況でそもそも消費が伸び悩んでいた。2000年初めにBSE問題が発生してからは、その安全性を問われる事態に直面。悪いイメージの払拭に関連業界は四苦八苦した。2011年の東日本大震災後には福島第1原子力発電所の事故で放射性物質に汚染された飼料を食べた牛が市場に出回る、セシウム牛問題も発生。消費者の牛肉離れに拍車をかける事態となった。そんな状況の中で始まった規制緩和は関連業界にとって「朗報」と言えよう。

大きな肉をじっくり蒸し焼き

 月齢の大きい牛が市場に出回ることで、従来は手に入りにくかった等級の高いももやサーロインなどの塊肉、牛タン、モツなどの内臓肉も手に入りやすくなりそうだ。牛肉の食べ方のバリエーションの増加にもつながり、焼き肉のたれやステーキソースといった、たれ・調味料の売り上げ増加も予想される。

 中でも最近、トレンドとなりつつあるのが、大きな肉を豪快に焼く食べ方だ。外食でも、400g超の「ポンドステーキ」を提供する店が増えたり、塊肉を鉄串に刺して焼くブラジルのバーベキュー「シュラスコ」が再びブームの兆しを見せたりしている。

 家庭内にもブームの波は押し寄せている。今までの焼き肉と異なり、大きな塊肉をフライパンでじっくりと蒸し焼きにし、たれをからめる「でか肉焼き」と呼ばれる食べ方が人気を集めている。エバラ食品工業では、ロングセラーの焼き肉のたれ「黄金の味」を活用した新調理法として提案している。

 足元の米国産牛肉の卸売価格は、今年に入ってから円安や飼料価格の高騰で当初の想定よりも高値で推移している。だが、今秋はトウモロコシをはじめ、穀物は大豊作の年となりそうだ。来年以降、為替に大きな変化がなければ、飼料価格の下落を受けて牛肉価格は下がると考えられる。これも、牛肉の消費増に追い風となりそうだ。

(構成:武田 安恵)

日経ビジネス2013年9月23日号 20ページより目次

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