「超速配送」実現に向け、物流施設内へのロボット導入の機運が高まっている。パレットからケース単位へ移ってきた自動化の波は、ついに単品に及び始めた。ヤフー・アスクル連合は、自動化でアマゾンや楽天に立ち向かう。

 物流施設の隅にうずたかく積まれた様々な大きさの段ボール箱。運送会社やネット通販の会社では当たり前になったこの光景が、一変するかもしれない。

 レンゴーが今年9月に開発した新しい包装機械は箱を使わずに、コンベヤーに置いた商品をシート状の段ボールで風呂敷のように包む。商品の寸法を機械が自動で測り、その大きさに合わせて折り目をつけて折っていくのだ。上からもう1枚の段ボールシートを載せて隙間を閉じれば完成だ。

(写真:Getty Images)

段ボールで「風呂敷包み」

 速さは1個当たり3秒。既製品の「箱」と異なり、段ボールの「風呂敷包み」は中身に対して、ほぼムダのない大きさに仕上がる。出荷時に1台のトラックに載せられる商品数は従来より2割ほど増えるという。何より、ネット通販で書籍や日用品を頼んだ時に、やたら大きなスカスカの段ボール箱を受け取らなくてよくなる。

 一つひとつの商品をいかに効率よく倉庫から出荷して運ぶか。レンゴーが示したのはその問いに対する解の1つだ。「超速配送」が広がるにつれて、物流施設の自動化を巡る競争も新たな次元に入る。物流・搬送機器大手ダイフクの下代博・執行役員はこう言う。「いよいよ、ピース(単品)の戦いが始まった」。

 かつて物流各社は、「パレット」と呼ぶ複数の段ボール箱を載せた荷役台を、いかに効率よく動かすかを競っていた。フォークリフトで運べる単位だ。コンビニなどへの小口配送が増えるにつれて、「ケース(箱)」をいち早く搬送する必要性が出てきた。仕分け用のコンベヤーなどはここで生まれた。

 それが今後はケースの中身、つまり、ピースに競争の軸足が移る。物流施設から商品を届ける先が、スーパーやコンビニを飛び越えて、個人の家になってきたからだ。ペットボトルを6本セットではなく1本だけ買いたい消費者は多い。当然、送るモノの組み合わせは一人ひとりバラバラだ。

 今は棚のランプを光らせて、スタッフにどの商品を箱に入れるかを指示するのが最前線の「ピッキング(商品を選んで取る)」と呼ぶ工程でも、「ロボットでやってしまうという話も現実味を帯びてくる」(下代執行役員)。

 超速配送の競争が熾烈になればなるほど、物流拠点を24時間動かす必要性が増すためだ。工場がそうだったように、人を集めにくい夜間にこそロボットの需要が生まれる。

 では、実際に稼働している倉庫では、どれほどの自動化が実現されているのだろうか。

 2012年にヤフーと資本業務提携して、一般消費者向けのネット通販事業に本格参入したアスクル。7月にオープンした物流施設「ロジパーク首都圏」(埼玉県三芳町)は「思い切った自動化を進めて、ネット通販の競争を勝ち抜く」(アスクルの吉岡晃取締役)ための戦略拠点だ。

 例えば、フランスの機械メーカーが開発した梱包機械を日本企業として初めて導入した。これまで人手に頼っていた段ボール箱を梱包する作業の7割をこの機械に託す。

(写真:木村 輝)

 実物を覗き込むと、3つの機構が巧みに連携していた。まず箱の中に入れた商品の高さを調べて箱に折り目をつける。次に、銀色の重りで折り目通りに畳み、ふた用の段ボールを貼りつけるまでの一連の作業をこなす。

 5秒足らずの間隔で美しい箱を吐き出すその機械を前に、アスクルの才田啓三ECR戦略企画部長は「4台で100人分の仕事をしてくれますよ」と話す。緩衝材を詰める人や、段ボール箱にガムテープを貼るスタッフの姿はない。

「クレーン」に「自動運転」

 まるでクレーンゲームのように、商品を載せた段ボールの板をつかんで箱に入れる機械、段ボール箱を置いたトレーの電子タグで情報を記憶し、注文された商品がすべて箱に入ると勝手に流れていく「自動運転」ライン…。この拠点で自動化した工程は梱包にとどまらない。もちろん、畳んだ状態で入荷した段ボールを開いて、箱に仕立てるのも機械だ。

(写真:木村 輝)

 吉岡取締役は「勝算はBtoB(企業間)とBtoC(企業と消費者間)の融合にある」と話す。アスクルがもともと強みを持つオフィス向け通販の注文のピークは平日の昼間。それに対して個人向けは注文が週末や夜間に集中する。組み合わせれば、1週間や1日の作業を平準化できるため、「自動化のメリットを最大限に引き出せる」。ライバルと比べて、販売価格やスピードで優位性を打ち出せるとにらむ。

 もっとも、ヤフー・アスクル連合が追う楽天は、2012年に立体倉庫の自動化技術に強みを持つフランスの物流会社、アルファ・ダイレクト・サービシズ(ADS)を買収。まだ1年足らずだが、9月に千葉県柏市に開く物流施設に同社の機械を導入すると決めた。また2012年には、米アマゾン・ドット・コムも米国のロボット企業、キバ・システムズを買収している。

 従来の倉庫の仕組みのままでは「超速」の時代を戦えない。自動化の技術をうまく操る者だけが、物流の大激変を乗り越えられる。

日経ビジネス2013年9月16日号 46~47ページより

この記事はシリーズ「特集 物流大激変」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。