モノ作り大国・日本が、世界的な競争力を失ったのはなぜか。為替などの要因でコスト競争力を失ったことにある。だが、これを製造工程だけで挽回しようとしても難しい。多くの企業が既に血のにじむような努力を重ねているからだ。

 一方で、製造前後の物流コストや在庫コントロールには改善できる余地が多い。例えば、川上から川下までのトータル在庫を圧縮できればコストは劇的に下がるし、製品のストック期間が短くなるほどコストは抑えられる。そういう意味では、日本の製造業の成長原資になるのは、ロジスティクスの改革だ。物流は宝の山だ。

(写真:竹井 俊晴)

 ただ、企業の物流機能を一括して担う3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)に根こそぎ外部に委託できるのは物流量の多い企業だけ。3PLがカバーできない中小企業では物流改革は進んでいない。そこで、この領域に入ろうと決断した。

 物流の仕組みを変えて、企業の物流部門をプロフィットセンターに変える。モノが流れる過程で付加価値をつけて利益を生み出せれば、製造業にとって物流部門は花形になる。

 その点では、東名阪にできるゲートウェイ(GW)は象徴的な役割を果たすだろう。GWによって主要都市圏は当日配送ができるようになる。この当日配送を企業がうまく活用すれば、それは利益の源泉となる。例えば当日中に製品や部品が納品されれば、製造スケジュールを緻密にコントロールできる。メーカーも小売業も、最適在庫の水準は劇的に下がるだろう。

 そもそもGWの構想は、私がヤマト運輸の社長時代、当時の有富慶二会長(現・相談役)から与えられた課題がきっかけとなっている。「将来、宅配便の取扱数が年20億個に達しても、品質を落とさず、コストを増やさない仕組みはないか」と。それまでにも社内ではいろいろなアイデアがあった。だが既に出来上がった仕組みを壊すことは怖くて誰もできなかった。私は銀行から転じた物流の「素人」。だからこそ、迷いなく改革に挑むことができた。

 9月20日に稼働する「羽田クロノゲート」や「沖縄国際物流ハブ」でも、モノを流しながら価値を付与するという考え方は変わらない。

 我々は今でも宅急便の会社である。だが宅急便の使い方に、今後は調達や納品というBtoB(企業対企業)の物流を乗せていきたい。企業の納品・調達物流や貿易物流が大きく変われば、製造業が国内に回帰できるかもしれない。その1号案件を、早く作りたいと思っている。(談)

日経ビジネス2013年9月16日号 36ページより

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