「ZOZOTOWN」の成長は常に物流が支えてきた
スタートトゥデイの株価推移
(写真:的野 弘路)

 19世紀初頭、フランスの軍人ナポレオンは、その巧みな兵站戦術で欧州を制圧した。しかし、物資の供給が途絶えたロシア遠征での敗北で勢力を失い、滅亡へと向かった――。

 モノの流れを制する者が時代を制し、失敗した者は世を去る。それは現代、ビジネスでも変わらない。象徴的な企業が存在する。アパレル専門通販サイト、「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイだ。

 ゾゾは2004年のオープン直後から、EC(電子商取引)の世界で注目を集め、頭角を現した。わずか3年で東京証券取引所マザーズ市場に上場、前澤友作社長は時代の寵児となった。

 豊富でセンスのいい品揃えに、洗練されたウェブサイトのデザイン。一般的に語られるそれらのゾゾの強さは、表面的なものだ。実はその成長を支えたのは、独自の物流戦略だった。

 2006年、サービス開始間もないゾゾは自前の物流施設「ゾゾベース」を立ち上げた。そこで、商品の撮影から検品、梱包までを実施し始めた。カギになったのは採寸。すべての商品を計測し直し、ブランドごとに違うサイズ表記を自社基準に統一した。

 サイズというアパレルの通販における最大の問題を、高度な物流機能を持つことで解決したのである。そのうえで、注文から最短2日で消費者に届けるスピード配送を実現した。

 快進撃はそこから始まる。2011年には会員数300万人を突破し、売上高を毎年3割近いペースで伸ばし続けた。ビジネスの「脇役」とされてきた物流を徹底的に磨いたことで、他の追随を許さない存在に成り上がった。

 そのゾゾも挫折を経験する。それも、物流に絡むものだった。2012年10月、前澤社長はある事件で謝罪に追い込まれた。きっかけは「(商品が)1050円なくせに送料手数料入れたら1750円とかまじ詐欺やろ~」という顧客のツイッター上でのつぶやきだ。

 それに対し、前澤社長は「ただで商品が届くと思うんじゃねぇ」「ヤマトの宅配会社の人がわざわざ運んでくれている」「感謝のない人間は二度と注文しなくていい」と一喝。以前から行き過ぎた「顧客主義」に疑問を呈していた前澤社長ならではの発言だったが、結果的に批判が集まった。

「言葉遣いに問題があったが、信念は変わっていない」とスタートトゥデイの前澤友作社長は1年前の炎上事件を振り返る(写真:村田 和聡)

 10月31日。前澤社長は決算会見の場でツイッターでの発言を謝罪し、以前から準備していた送料の完全無料化を発表。それでも下落基調にあったスタートトゥデイの株価の低迷は止まらず、成長のペースも鈍化していった。

 いかに巻き返すか。ゾゾが再起を託すのも、やはり物流だ。

 「今年度中に当日配送を始めたい」

 8月29日。千葉県習志野市に完成した物流施設の竣工式で、前澤社長はこうぶち上げた。自社の前期の流通総額958億円を大きく上回る3000億~4000億円分の商品を扱えるこの拠点は、次なる成長の切り札になる。そこを起点に、成長の原点だった物流を再び強化する。

 物流が企業の栄枯盛衰をも左右する。その事実を痛感した前澤社長が選んだパートナー。それが、ヤマトホールディングスだ。

日経ビジネス2013年9月16日号 30~31ページより

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