普通科(中学)から通った自由学園男子部はユニークな教育方針で、入学から1年間は、生徒全員が寮生活を送ります。そして、自分が使う机とイス、本箱を作るところから勉強が始まります。そんな体験もあってかDIY(Do It Yourself)が好きになり、以来、いろいろなものを作ってきました。

 その趣味が高じて、45歳で群馬にスキーのための別荘を購入した際、週末の時間を使って、庭に木工所を建てることを計画。山と渓谷社から出ていた『ハンドメイド・ハウス』という本を頼りに、近隣の大工さんなどにも話を聞きながら、基礎工事から屋根工事まで、すべて自分で手がけました。

 木材は庭の杉の木を伐採して使ったのですが、これがかなり大変でした。製材された角材とは違って、太さが均一ではない丸太に直接、壁を張ることはできません。そのため、水平・垂直を取って墨出しをして溝を掘り、そこへ木の板を入れてから壁を張っていきました。梁にしても然りで時間がかかり、40平方メートルほどの建物でしたが、完成までに6年を要しました。

 その後、雑誌で「家づくりは男のライフワークだ」という特集を目にし、そこに書かれていた「家の1軒くらい建てられなければ男じゃない」という言葉に触発されて、木工所の次は、人が住める家を建てようと決めました。

 群馬で知り合った友人が、千葉で見つけた土地1000坪を共同で購入。海岸のすぐ近くなのですが、山の麓でもあるところで、木を伐採するのに1年、傾斜地での基礎工事に3年、完成までには8年がかかりました。電気の引き込み、エアコンと掃き出し窓の設置はプロに任せましたが、それ以外は、井戸掘りもすべて自分で手がけました。

 この家は130平方メートルほどで、居間と寝室、アトリエがあります。妻の希望で広い浴室も作りましたが、タイル貼りがひと苦労で、出来上がりも少々不揃いになりました。一方で、基礎の鉄筋コンクリートは基準よりも強度を増しているので、大工さんが建てた家よりも頑丈だと自負しています。

汗を流した成果が目に見える

 DIYの面白さは、体を動かして汗を流した成果が目に見えて分かること。これがやっぱりうれしいんですね。運動不足の解消になりますし、作業に没頭することでストレスも発散できます。また、DIYでは事前の段取りが重要です。1つでも足りないものがあれば作業が進まなくなるので、次の週末には何をやるか、そのためにはどんな準備が必要かを考える。完成を目指して段取りをつけるところからワクワクできるのも、DIYの大きな魅力です。

 とにかく作ることに夢中で、家が完成してからはそれほど通わなくなってしまいました(笑)。でも、いずれ仕事をリタイアしたら、この家を基地にして、大好きな釣りや畑仕事を楽しみたいと思っています。

高倉 豊(たかくら・ゆたか)氏
(写真:山田 愼二)
1948年生まれ。自由学園男子最高学部を卒業後、博報堂を経て、パルファム・ジバンシイ、イヴ・サンローラン・パルファン、タグ・ホイヤー、ウブロなど外資系企業の日本法人5社のトップを歴任。2011年から現職。

(談話まとめ:田村 知子=フリーランスエディター)

日経ビジネス2013年9月2日号 60ページより目次