グローバルで急拡大を続ける自動車市場。新興国などへクルマの販売地域を広げるには、それぞれの市場ニーズに合わせて、多様な車種を迅速に投入することが不可欠だ。

 だが、従来のように、車種ごとに部品を一つひとつ設計し、すり合わせていくのでは、開発工数が激増し、時間もコストも膨らんでしまう。だからこそ、自動車メーカー各社は一斉に、モジュール開発へと舵を切った。

 独フォルクスワーゲン(VW)の「MQB(モジュラー・トランスバース・マトリックスの独略語)」や日産「CMF」、トヨタ自動車の「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の基本コンセプトはほぼ同じだ。

 まず、クルマを「モジュール」と呼ぶ固まりに分ける。日産CMFの場合、前方のエンジンとその周辺部分の「エンジン・コンポーネント」や、前方の車台や足回りの「フロント・アンダーボディー」など、部位ごとの4モジュールに電子制御系を加えた5つのモジュールがある。

 各モジュールには、高さの高低や、載せるものの重量などによって複数のバリエーションがある。モジュールの組み合わせ次第で、多様なクルマが出来上がる。

 クルマのモデル数が増えたとしても、モジュールのバリエーションが増えなければ、開発工数はさほど増えない。部品の共通化も格段にやりやすくなる。日産はCMFの導入によって、新型車の開発コストを3~4割、削減するという。

 かねて自動車メーカー各社は、「プラットフォーム」と呼ぶ車台を、複数の車種で共通化することでコスト削減を図ってきた。だが、いくら車台が共通だったとしても、セダンやSUVなど車種が違うと、それ以外の部品の差異が大きく部品共通化には限界があった。結局、車種によって少しずつ違う部品を作り分け、生産現場でのカイゼン活動によってコストを圧縮する以外に道はなかった。

 試行錯誤の末、自動車メーカー各社がたどり着いたのが、モジュール開発だった。その先頭を走るVWは、世界12ブランド、280超の車種を抱えており、今後もモデル数は増え続ける見込みだ。MQBの導入は、販売で世界トップを奪取するための中核戦略だった。

 モジュール開発で後塵を拝したトヨタは、2015年にも発売する新型「プリウス」からTNGAを採用する。世界の頂点を目指す自動車メーカーにとって、モジュール開発の導入は、もはや必然だ。

日経ビジネス2013年7月22日号 29ページより

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