ゴールデンウイーク明け。東京・浜松町のビルの1階に、熱帯魚の大型水槽を置いたサロンが開設された。三線の音色が流れ、南国情緒を醸し出す。大和ハウス工業が沖縄で開発する分譲マンションの、東京の顧客向けの商談スペースである。

 地上30階建ての2棟で計676戸。これほどの大型物件は沖縄初となる。価格も破格だ。平均坪単価172万円で、通常の沖縄での分譲価格の約1.5倍。最も高い部屋で5600万円だ。

 このサロンはモデルルームではない。資料を提示され、説明を聞いた後は現地に赴くのが本来の流れ。ところが――。

 「私は忙しいので、さっさと手続きを終えてほしい」。販売開始2日間で、資料請求も現地見学もせずに6組が購入を決めていった。既に2棟のうち1棟分を完売。「想定の2倍のスピード。沖縄の人口などを鑑みれば、想定外の売れ行き」と同社は明かす。資料請求者の約4割が首都圏の富裕層だという。

おもろまちで建設中のマンション。写真下、普天間基地も日米合意による返還対象地。返還が明記された2022年以降、風景が一変する可能性がある

 東京の不動産マネーが沖縄に「飛び火」している。このマンションが建つ場所は「おもろまち」。洒落たブティックやレストランが立ち並ぶ新都心として近年開発が目覚ましい。地元の不動産業おもろハウジングの天久学社長は「個人向けリゾートマンションもしかりだが、リーマンショック後、本土の企業の進出がぴたりと止まっていたおもろまちの賃貸オフィス物件も今年に入って大きく動き出した。東京の保険会社や製薬会社などが再びオフィスを構えている。コールセンターも新たに作られている」と明かす。

 そもそもこの地は、米軍関連施設があった場所。1987年に全面返還され、2000年以降、急激に発展を遂げた。大型商業施設や免税店、美術館などが整備され、中核都市に成長。天久社長は「今後、県内の軍用地が返還され、計画的に整備されれば、不動産価値は高まるだろう」と説明する。

 日米両政府は今年4月、嘉手納基地以南の基地返還計画を発表。早くも東京のデベロッパーが、いくつかの基地の返還を見込み、都市開発の青写真を描いているという。

 アベノミクスの効果が続けば、おもろまちを先例として、沖縄に流れ込むマネーがさらに増えるかもしれない。

日経ビジネス2013年6月10日号 31ページより

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