特集ではアベノミクスで揺れ動く不動産市場を追いました。身近なようで縁遠い土地建物取引や不動産投資の世界。何となく敬遠しがちなのは相対取引で一物一価という特殊性ゆえでしょう。一件ごとに価格は異なり、情報量もプロと個人では圧倒的に違います。

 ビルやマンションの場合、プロは「屋上」「トイレ」「非常口」を見て目星をつけるといいます。まず屋上から眼下を見渡せば、日当たりから周囲の騒音、ゴミ収集所まで分かります。次は清掃直後のトイレへ。床や便器がきちんと乾いていれば水はけが良くカビの心配もない。非常口の位置は地震・火災時の安全性を見極める目安になります。

 「間取り」「最寄り駅からの距離」「価格」といった表面的なデータに目を奪われがちな個人との落差はあまりにも大きすぎます。「今決めていただければ猛勉強(値引き)しますよ」。不動産を見に行って、営業マンの口車に乗せられそうになったことはありませんか。不動産が一物一価である以上、掘り出し物などあり得ないはずです。

 アベノミクスと騒がれて半年。既に株式や金利は不安定な値動きを見せ始めました。不動産市場の活況は当面続くようですが期待先行の危うさは肝に銘じておきたいものです。

(清水 崇史)

日経ビジネス2013年6月10日号 120ページより目次