チベット高原を発し、南シナ海に流れ込むメコン川。流域のインドシナ半島は1980年代まで戦火が絶えなかった。カンボジアにはいまだに地雷が残る。ミャンマーが軍政から民主化に動き出したのはわずか2年前だ。だが、メコン川流域の国々はその潜在力を開花させつつある。2015年末には域内関税を撤廃。2020年までには地域を縦横断する道路網の整備も進む。メコン地域が新しい「世界の工場」となる日が間近に迫っている。

(上海支局 坂田 亮太郎)
(デザイン:山﨑 由梨)
出所:人口の数値は国際通貨基金(IMF)の推定(2012年)
●経済回廊
メコン各国と中国をつなぐ越境道路。全9本の整備計画があり、ベトナムからミャンマーに至る東西経済回廊が有名

●メコン川
チベット高原に源流を発し、インドシナ半島を南下して、南シナ海に流れ込む。総距離は4032kmの国際河川


・ミャンマー
アジア最後の“フロンティア”
軍事政権が長く支配してきたが、2011年から民主化に歩み出した。人口6367万人

・ラオス
東南アジアのバッテリー
ASEANで唯一海に面していない。人口は638万人のみ。メコン川のダムで水力発電

・タイ
メコン屈指の産業基盤
日本企業中心に外資を誘致。自動車や家電製品の生産拠点に。人口6438万人

・カンボジア
ASEANの中の親中国
長く続いた内戦で国民の半数が20歳以下。政治的には中国に近い。人口1525万人

・ベトナム
工業国目指す海洋国
国土の大半が海に面する特徴を生かして重工業の振興を目指す。人口9039万人
メコン地域とは:
 東南アジア諸国連合(ASEAN)を構成する10カ国のうち、メコン川の流域に位置するタイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの5カ国を指す。メコン域内の人口は約2億4006万人。人件費が安いため製造拠点として注目を集めている。

CONTENTS

進路は南西へ
中国七重苦を回避せよ

メコン地域の生産体制
先行企業の決断

市場として見たメコンの魅力
経済指標では見えてこない実像

「ミャンマーが西の限界」
日本製造業のラストリゾート

日経ビジネス2013年5月13日号 26~27ページより目次