「インドネシアはイスラム国家だ」「貧困にあえぐ国民に高価なものは売れない。BOP(ピラミッドの底辺)ビジネスが基本になる」「インドネシアは資源大国だ」──。この国を形容するのに用いられるこれらの常套句は、果たして本当なのか。
インドネシアの歴史は、1万8000を超える島嶼(とうしょ)に住み、多様な宗教、文化を育んできた300を超える民族2億4000万人が、共通の敵・オランダに対する独立戦争をともに勝ち抜いたという一点だけを礎に「国」を形成しようとする試みだった。その国章に刻まれている文字は「Bhinneka Tunggal Ika(多様性の中の統一)」。理解したと思っても、すぐにまた別の顔をのぞかせる。許容するしかない豊かな多様性を、この国は、誕生の瞬間から宿命的に抱えて歩んできた。
この巨大かつ多様な人々の集まりは、その溢れるほどの可能性を実らせて東南アジアの盟主となれるのか、それとも可能性は可能性のまま永遠に実らず終わるのか。南洋に浮かぶ「未完の大国」インドネシアの今と、その行く末をお伝えする。
インドネシア

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