特集の取材で10年ぶりに欧州に出張しました。前回、英語力に難がある筆者は出張のために高性能のソニー製ICレコーダーを購入し、これが現地の取材先の注目の的となりました。「こんなに小さくて50時間近くも録音できるのか。さすがソニーだ」と言われ、誇らしく思ったことを覚えています。

 今回持参したレコーダーは当時のものより録音時間、音質ともに上ですが、現在ではごく標準的な製品です。その性能を尋ねる取材先も皆無。技術革新と低コスト化で、レコーダーはもはや必要十分な機能を手頃な価格で買える“汎用品”になったのでしょう。

 これから10年、クルマも同じような道をたどるかもしれません。欧州で成長するダチアは走行の基本性能において、一昔前の部品を使っても消費者は十分満足できることを証明しました。それでも革新余地のある技術を磨いて高品質を追求し続けるか、思い切って価格勝負に打って出るか。日本車も遠からず決断を迫られそうです。

 最後に私事ですが、今月末で3年間在籍した日経ビジネス編集部を離れ、日本経済新聞社に戻ります。読者、取材先の皆様の叱咤激励によって、充実した時間を過ごせました。この場を借りてお礼申し上げます。

(伊藤 正倫)

日経ビジネス2013年3月25日号 148ページより目次