アジアに欧州に、「無印良品(MUJI)」を展開する良品計画の海外展開が加速している。その勝因を「ブランド」「デザイン」に求める向きも多いが、それだけではない。かつての手痛い失敗を糧に、同社は海外で「負けない」ための盤石な仕組みを整えていた。

 アラブ首長国連邦(UAE)、ドバイ。世界で最も高層の建造物として知られる「ブルジュ・ハリーファ」には、ショッピングモール「ドバイ・モール」が直結している。テナント数はおよそ1250店。スケートリンクや子供向けテーマパーク、水族館も擁し、歩いて回るだけで半日以上はかかるという世界最大の複合商業施設だ。

 2月8日、衣料・雑貨専門店「無印良品」を展開する良品計画の松井忠三会長はドバイ・モールを訪れた。売り場面積およそ240坪(約800m2)、衣料や雑貨を中心に2000アイテムを揃える中東地区の旗艦店の開店セレモニーに出席するためだった。

 テープカットを終えて店内を視察する松井会長に、「カンドーラ」と呼ばれる純白の民族衣装に身を包んだアラブ系の男性客が話しかけてきた。

 「MUJI(ムジ)がドバイにできて本当にうれしい」

 その男性は笑顔で言った。

 「僕は東京でMUJIを知ってからファンになった。待っていました」

 未出店だったドバイで、出店を待ち焦がれられるブランド――。無印良品は海外では「MUJI」のブランド名で展開されているが、この男性のような「MUJIファン」の存在は、海外では決して珍しいものではない。

 記者も何人かの来店客に「MUJIを知っていたか」「MUJIをどこで知ったのか」「なぜ好きなのか」などを尋ねてみた。結果、7割方はMUJIが日本のブランドであることを正確に知っていた。MUJIを好む理由を聞けば、返ってくる答えは「シンプルで機能的」「日本の禅の精神を感じる」「飾りが少なく、素材の持ち味を生かしたものが多く好ましい」など。世界の富裕層が集まるドバイでも、このブランドが一定の存在感を持っていることをうかがわせた。

 近年、海外での出店が加速し、世界で「MUJI」の存在感が増している。

 既に海外23カ国・地域に208店舗を構えている。国内の店舗数は384。現状、売上高の81.8%を国内事業で稼ぎ、アジア事業は9.3%、欧州事業は3.7%を占めるに過ぎないが(2012年度中間期)、勢いがまるで異なる。2011年度は国内に13店舗純増させ、海外はその倍以上、29店舗純増させた。2013年度に海外売上高は400億円に達し、全社売上高の20%を占める計画だ。しかも、やみくもに出店するのでない。例えばアジア事業の売上高営業利益率は、国内直営事業と同じく、小売業としては極めて高水準の約10%をキープしている。

開業当日、ドバイの店舗を視察する松井忠三会長(左写真、中央)。インドや欧米など世界の富裕層が集まるドバイに開いた旗艦店は、世界市場に向けた「ショールーム」でもある

11年間赤字だった海外事業

 なぜ良品計画の海外展開は成功しているのか。

 この設問に対して、先に挙げたドバイの来店客たちに聞いた話などを基に、定性的な解答を示すことはたやすい。「虚飾を排したシンプルな機能美という価値観が、世界にも受け入れられた」など。だが、商品やブランドコンセプトが優れているということは、良品計画が海外展開に「成功した要因」としては正解になり得ても「失敗しなかった要因」としては不十分だ。

 棒グラフは、同社の海外店舗数を示す。1991年に海外進出したものの、11年間赤字を出し続け、90年代の終わりにはアジアは一度、完全に撤退している。ようやく黒字化できたのが2002年度。近年再加速させた海外展開は2度目の挑戦と言っていい。

 本稿では設問をこう変えよう。良品計画は、なぜ2度目の海外展開を「失敗しなかったのか」――。4つの視点から考えたい。


 海外に限らず、小売業が「失敗しない」ために何より必要なのは、出店の精度を上げること。つまり、儲からない店を出さず利益を出す店だけを開き続けることだ。

 店舗の利益を確定する要素は2つ。1つは「売上高」、もう1つは「費用」だ。この2つを出店前に正確に予測できれば儲からない店を出すことはない。と、言うのはたやすいが、それができずに多くの企業が「出してみたら、思ったより儲からなかった」と非効率な出店を続けている。

 良品計画は、この2つを精緻に読む方法を磨き続けてきた。

 まず「売上高」。同社には、出店候補地について事前調査する際に用いる「出店基準書」と呼ばれるシートがある。文字通り、出店してよい物件かどうかを判定する基準となるものだが、それだけのものではない。

 下の表はその一例で、中国市場で用いているものだ。同社の場合、中国国内では単独の路面店というのはほぼないので、出店候補地はショッピングモールなどの複合商業施設になる。出店基準書とは、出店を検討する商業施設について、複数の項目を5段階で採点し、その合計点数を算出するものだ。

 例えば「商圏人口」は、施設が立地する行政区の人口によって5段階で評価される。100万人以上であれば「5点」が配点され、30万人未満であれば「1点」しか配点されない。言うまでもないが、周囲の人口が多いほど来店客数が増える可能性が上がるからだ。

 「最寄り駅からの距離」は近いほど、「駐車場の台数」は多いほど、「スーパーマーケットの面積」は広いほど(大きなスーパーがあると、定期的な来店客が増えるため)、ユニクロ、ZARA、H&M、GAPなど「集客力の大きな有名テナントの入居数」は多いほど、それぞれ大きく加点される。

 ここで重要なのは、誰が評価しても同じ答えになるような客観的で定量的な評価項目を採用している点だ。これにより、開発担当者個人の印象論や勘を評価から排除している。

 満点は100点。点数の合計によって、「S・A・B・C・D」の5段階に分ける。最も合計点が高い「S」は最も高い売上高が見込める立地ということになる。

 ただの評価ではない。この5段階評価によって年商まで予測する。現行の仕組みでは、S評価の店舗は「年商4000万元(約6億円)以上」を売り上げると見る。D評価は逆に「年商1200万元(約1億8000万円)未満」しか売れないと判断する。この評価だけで出店の可否を決めることはないが、一定以上の利益を確保できる売り上げになるかどうかをこれで判定する。

 さらにこれを「予実管理」する。期を締めた段階で、出店基準書の予測と実際の年商を比較し、ズレがなければ「○」。一定の範囲以上のズレがある場合は「×」をつける。

 この仕組みのすごみは、予測に対して実績が「上振れ」した場合、つまり予測よりもよく売れた場合でも「思ったより売れてよかった」「売り上げがすべてを癒やす」で終わらせずに、やはり「×」をつけるところにある。上振れであろうと下振れであろうと、年商予測の精度に問題があることは変わらないからだ。

 「×」がついた場合、何が原因で予測が外れたのかを検証し、その結果を基に出店基準書の項目や配点を常に修正し続ける。上振れ、下振れを問わず「×」の数が最小化するように出店基準書を磨き続けることにより、年商予測の精度が向上し続け、経営環境の変化にも対応し続けられるというわけだ。

 次いで「費用」。言うまでもないが「売上高-費用=利益」なので、出店前に売上高を読むことができるようになれば、「費用」を御することで出店前に「利益」を予測できるようになる。

中国・上海の商業施設「浦東嘉里城」の店舗。上のように間口が広く、下のように外から看板が見える施設は点数が上がる(写真:町川 秀人)

確実に儲かる家賃で契約

 費用は「原価+経費」から成るが、良品計画は世界で同一商品を扱うSPA(製造小売り)業態なので、「原価」は国内でも海外でも基本的には変わらない。「経費」をどこまで抑え込めるかによって利益は大きく左右されることになる。

 経費の中でも特に収支に影響が大きいのが、入居するデベロッパーに支払う家賃だ。1990年代の海外進出が失敗に終わった最大の原因が、家賃が高すぎて利益が出なかったことにある。

 いかに家賃を抑えるか。同社が商業施設デベロッパーとの家賃交渉で貫く原則はシンプルだ。

 まず「固定制」家賃は取らない。商業施設とテナントとの家賃契約には、大別して2種ある。1つはテナントの売り上げに一定の割合を乗じて家賃を算出する「変動制」。もう1つはテナントの売り上げにかかわらず一定の金額を家賃とする「固定制」。良品計画は例外なく前者の方式を取っている。

 2つの方式に一長一短がある。固定制の場合、テナントが想定より大きく売り上げを伸ばしても家賃の金額は変わらないので、売上高に占める家賃負担は相対的に小さくなる。だが逆に、想定より売り上げが伸びなかった場合でも家賃は抑えられないので、負担が重くのしかかる。つまり固定制家賃は「売れればより儲かり、売れなければより負担が大きくなる」仕組みだ。一方で変動制家賃は、売れても売れなくても売上高に対して家賃が占める割合は一定であり、出店前から確実に読むことができる。

 「失敗しない」海外出店にとって重要なのは、売れるか売れないかによって大きく利益率が変動してしまう仕組みよりも、出店前から確実に利益率が読めて「大きく儲かるチャンスはないが確実に儲かる」仕組みだった。

 同社では、変動制家賃が売上高に占める割合に基準を設けており、これを満たさない条件では出店しない。また、商業施設の管理費や共益費など、売上高に関わらない固定費もなるべく払わないように交渉する。すべては、出店前から「経費」を見通して「利益」を確定させ、「失敗しない」出店を成功させるための取り組みと言えるだろう。


 家賃が安く立地が良好な商業施設に店を開いても、サービスの水準が低ければ繁盛店になろうはずがない。

 同社で「ムジグラム」と呼ぶ複数冊に及ぶ冊子がある。その内容は、レジでの挨拶、お釣りの受け渡し、商品の陳列からアルバイト従業員に関する労務契約まで。店舗で働く従業員のあらゆる「業務」が書き込まれている巨大なマニュアル群だ。

 日本語版はおよそ1600ページ。同社ではこれを、中国語、英語、韓国語に翻訳して各国で活用している。

ムジグラムは、まずは3カ国語に翻訳されているが、現地の実情に合わせて独自に改定していくことになる

 こうしたマニュアルが、各国店舗のサービス水準を一定以上に保つために有用なツールであるのは確かだ。だが、小売業で働くのは人。製造機械の操作マニュアルと異なり、文化的な背景や慣習、商習慣、法令などあらゆるものが日本と異なる海外に適応したものを作らなければ、たとえ完璧に翻訳できたとしてもおよそ役に立たない。

 では良品計画はいかにしてムジグラムを各国に移植しようと試みているのか。前段で見たように、良品計画は「出店基準書」を、ただ年商を予測するのに用いるだけでなく、実績と比較して「予実管理」することで磨き続けている。「仕組み」は、導入するだけでなく、それを実行する過程で結果のフィードバックを受けながら改善し続けることで「生きた仕組み」になる。これが同社の松井会長の持論だ。このマニュアル群も同様だった。

磨き続けてこそ意味がある

(写真:町川 秀人)

 業務遂行中に思いついたアイデアや顧客からの要求など、ムジグラムが想定していない情報や提案を、同社では、社内ネットワークを通じて全従業員から常に集めている。

 業務改善のチームがこれを取りまとめ、提案を採用するかどうかを担当部署と協議しながら決める。どんな些末な提案に対しても、必ず採用の可否を公開する。採用されればムジグラムを改定する。優れた提案に対しては表彰する仕組みもある。製造業で言うところの「カイゼン」に相当するような草の根の取り組みだ。

 例えば、雑貨などをまとめ買いして自宅への配送を依頼してきた顧客があった。破損しないように緩衝材を入れて包装して発送することになる。だが、考えてみれば、そもそも物流センターから店舗まで配送する際の梱包をわざわざ解いて店頭に並べたのに、再びこれを梱包し直していることになる。

 であれば、大量に購入する顧客が配送を依頼してきたら、物流センターから直接配送してしまえばいい。良品計画ではインターネット上で通販事業も展開しており、物流センターにはネット通販向けに商品を梱包して宅配するインフラが整えられている。これを使えばいいのではないか。この提案は受け入れられ、新たな業務の手順としてマニュアルに書き加えられた。

 業務の「すべて」と言っていい網羅的で巨大なマニュアル群を、全従業員で書き換え続ける。この営為が、すなわち良品計画の業務改善の取り組みそのものと言える。良品計画が海外事業に「輸出」しようと試みているのは、ムジグラムの紙に書かれた情報そのものではなく、その絶えざる改善の精神とそれを具現化する仕組みだった。


 ファブレス型SPAである良品計画は、全商品約7500アイテムを自ら企画し、中国をはじめとした世界各国の協力会社に製造を委託している。

 かつての良品計画のビジネスモデルは、「『世界』で作ったものを『日本』で売る」というもの。海外事業の規模が小さかった間は、国内事業の商流・物流を基本に考え、海外店舗には例外的な方法で商品を運べばよかった。だが、海外売上高比率が高まるにつれ、海外事業は同社の経営にとって「例外」ではなくなりつつある。

 例えば、衣料品を取り扱う小売業ならどこも頭を悩ませる「在庫」。同社もまた、経営が急激に悪化した2000年前後、膨れ上がった不良在庫に苦しめられ、評価損として特別損失を計上して赤字に転落した苦い経験がある。

 その反省に基づいて、同社は在庫を制御するために様々な仕組みを導入してきた。店舗、物流センター、工場それぞれの場所にどの商品の在庫がどれだけあるのかを情報システムで「見える化」。店頭での販売動向に基づいて増産のアクセル、減産のブレーキを踏む自動発注の仕組みも取り入れた。

 ところが、こうした国内事業の仕組みに、海外店舗は結びつけられていなかった。海外店舗は、ただでさえ輸送中の貨物船上や通関のために留め置かれた港に在庫が滞留しやすく、機会損失を恐れて多めに発注する傾向にあり、在庫管理が利きにくい。にもかかわらず、正確に把握する手段がなかったのだ。

 もう1つは「物流」だ。同社は2005年に中国・上海に進出した。当時、衣料品の9割は中国で製造していたが、店頭に並んだ商品は、すべて神戸の物流センターから船便で運ばれたものだった。つまり中国で製造し、日本に輸入し、わざわざまた中国に輸出していたわけだ。海外事業が「例外」だったことをよく示すエピソードだろう。

 近年、人件費高騰などの影響で中国から東南アジアなどに生産拠点を移転する例が増え、衣料品でも中国生産比率は7割を切った。出店する国や地域も増え続けている。生産地、集積地、消費地が世界中に拡散する中で、物流はますます複雑化している。

世界の生産、在庫状況を見える化

「海外事業は、基盤を確立するホップ、ステップを経てジャンプで加速させる」という金井政明社長(写真:的野 弘路)

 同社が始めているのは「『世界』で作ったものを『世界』で売る」というモデルの確立だ。そのために、在庫コントロールや物流の仕組みを構成するパズルを組み替えようとしている。

 新情報システムは2013年の秋冬商品から稼働する予定だ。これにより世界各国の店舗や物流センターが日本と同等の仕組みで接続されることになる。「システムに、実際にモノが動く仕組みを調整していくのには時間がかかる。1年間かけて精度を上げていきたい」と金井政明社長は言う。

 これまで発注や物流、在庫の制御は現地に任せることも多かったが、この仕組みが稼働すれば本社商品部が一元的にグローバルに管理し、海外現地法人は「販売」に専念することになる。

 そのための下準備は進んでいる。生産から販売に至るサプライチェーンにおいて、各国提携企業の事情や物流の仕組みの違いなどによってブラックボックス化、複雑化していたプロセスを、シンプルに整理・統合して徹底して「見える化」する取り組みだ。

 例えば製造拠点。2011年春に130拠点あった衣料品の工場は、現在90工場に減っている。これをさらに70~80工場に減らす。工場数を減らせば、在庫や生産状況を把握しなければならない拠点が減ることになるからだ。

 従来、商社などに依頼していた各国間の貿易業務の一部を、調達を担う100%子会社のムジ・グローバル・ソーシングが手がけ始めている。貿易業務のコストを削減するのと同時に、モノとカネの流れを自社グループ内で正確に可視化できるメリットがある。

 また、海外事業向けの専用物流センターを中国に開設して稼働させた。分散していた物流を、このセンターをハブとして統合・整理していく。

 本社側で各国語の商品ラベルを用意して商品に貼って出荷する準備も進めている。従来は、海外法人が為替を計算して売価を決め、日本語ラベルの上から現地通貨の価格が書かれたシールを貼るなどして販売していた。これでは売価の決定権は現地法人が握ることになる。あらかじめ外国語で現地通貨の売価を入れたラベルを貼って出荷することで、否応なく売価は本社商品部が決定することになる。つまり商品単位の「売上高」を制御できることになる。

 Point1では「店舗」単位の利益を御する方法を見たが、この新システムは、物流費などの「経費」と「売上高」を本社側で一括して制御することによって、「商品」単位での利益を御するための取り組みと言えるだろう。


 最後が「人」の問題。海外展開を「失敗」に至らせる最大の陥穽の1つと言えるだろう。

 東京の本社で働く従業員からすれば「海外は『ウチは特殊な理由がある』と例外ばかり求める」と不満が蓄積している。逆に海外法人で働く従業員からすれば「東京はこちらの実情も知らずに何でも勝手に決めて頭ごなしに命じてくる」となる。経営がどれだけ優れた仕組みを整えても、人心がこのような状態では動くものも動かない。

 このコミュニケーションの壁をどう取り払うか。

 良品計画では、2011年から、本社課長クラスの社員を海外拠点に3カ月ずつ長期出張扱いで派遣している。海外拠点の現地従業員などとも触れ合い、苦労も知ることで、帰国後に海外事業に対する「抵抗勢力」になることを防ぐのが狙いだ。逆に、現地採用の外国人従業員の幹部候補生を、東京本社に1年間派遣することもしている。この外国人従業員には取締役会を除くあらゆる会議に出席してもらい、本社での意思決定のプロセスを知ってもらう。

 「これまで余裕がなく、現地化で幹部候補生をきちんと育ててこられなかった」(松井会長)という反省に立って、中国の大学を卒業した中国人の若者を採用することも始めた。

 海外から日本へ、日本から海外へ。盛んに従業員を行き来させ、お互いを知る従業員を1人でも多く育てて、組織の風土を「グローバル企業」のそれにじわり変えていくのが狙いだ。

 また、従来は、海外店舗の開発、販売管理、人事労務などの機能については、すべてを横断的に担う海外事業担当部署が管轄していたが、2012年からは、それぞれの業務を通常の縦割り所轄部門が担うことになった。海外事業は「例外」でなく、全社業務の一環であることを組織の形態としても示したものと言えるだろう。

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 「売上高-費用=利益」の式を示して、事業で失敗しないためにはどうすればいいかと問われれば、多くの人が「売上高」を最大化し、「費用」を最小化することで「利益」を確保することだ、と答えるだろう。

 もちろんそれは正しい。だが、これまで4つの視点で見てきたように、良品計画は「どう利益を伸ばすか」という視点は当然持ちながらも、それ以前に、利益が出るかどうかを可視化して正しく「知る」ことと、そのための「仕組み」を重視している。仕組みで可視化できないギャンブルのような浮利は求めない。これが同社が「失敗しない」最大の秘訣と言えるだろう。

 「無印良品(MUJI)」に、他社には簡単に真似できない強固なブランド力があることは確かだ。「ブランドがあるから海外展開できるのだろう」と見る向きもある。だが、そのブランドを輝かせているのが、強くあるための仕組みを常に磨き続けようという精神であることを見逃すべきではない。

(香港支局 池田 信太朗)

日経ビジネス2013年3月11日号 48~55ページより目次