略歴:1952年生まれ。京都大学法学部卒業後、76年日本電信電話公社(現NTT)入社。2008年NTT西日本常務、2009年副社長、2012年6月に社長就任。

 私のデスクは社内の誰よりもきれいだと自信があります。きれいというよりも、物がありません。我が社の幹部の中には、山のように書類を積み上げて仕事をしているふりをしている人もいますが、そういう人に限って仕事は遅いと思われます。

 書類は8年間連れ添った書類ケース1台で整理しています。経営企画部長だった頃に会社から支給された何の変哲もないケースですが、オフィスが替わるたびにこれだけは持ち歩いているのです。

 約30個の引き出しがあり、例えば「中期計画」「サービス開発」「人材戦略」「アライアンス戦略」といったラベルを貼り、経営の根幹に関わる文書やメモを分類するのです。デスクの真後ろに置いてあり、回転いすを回して1日何回も書類を出したりしまったりしている、私の頭脳のようなものです。

 うまく機能させるコツは、書類を捨てることです。社長という立場上、1日外出していると各部署からの報告などの書類が机に10cmもたまります。ほとんどは読んで捨てています。ただ、担当者が一生懸命作った書類だから目の前で捨てるのは気の毒。2~3日置いておく場所も確保しています(笑)。

社内の「外部脳」を活用

 細かな報告書やデータなどは各部署にあるから電話で問い合わせればいい。自分では持たず、「外部脳」を活用するわけです。

部署やオフィスが替わっても必ず連れてきた書類ケース

 引き出しの中にある書類も四半期に1回は整理して捨てます。捨てないとどんどん陳腐化していき、引き出しの開け閉めがスムーズでなくなります。引き出しをすっきりさせておくと頭の中もクリアになるから不思議ですね。

 IT(情報技術)会社の社長なのに何とアナログな、と笑われるかもしれませんが、もう1つの愛用品は赤鉛筆です。資料を読み込む時は必ず赤鉛筆を使い、アンダーラインを引いたり、メモを書き入れたり、図表を描き込んだりします。こうすると、後から読んだ時に自分の思考過程が再現されて、書かれていることに対してどう行動すればいいのか瞬時に分かるのです。

週に1本は使い切るという赤鉛筆。右の印鑑は挨拶状などで愛用している

 赤鉛筆のあの軟らかさがいい。使えば使うほど頭の中に入ってくる感じです。1週間に1本は使い切ります。私の秘書が朝一番にする仕事は赤鉛筆を削ることなのです。

(構成:小板橋 太郎)

日経ビジネス2012年12月10日号 66ページより目次