スマートフォンは通常、高機能携帯電話と訳されます。しかし、このネーミングが実態をゆがめているのかもしれません。特集で紹介していますが、携帯電話ユーザー1000人に「最も利用するコミュニケーションツールは何か」と聞いたところ、29歳以下で「通話」と回答したのは14.5%。60代以上の48%と比べ、3分の1以下しかいませんでした。メールやフェイスブックなどコミュニケーションの手段は多様化しており、若者はスマートフォンを電話とは思っていません。

 しかも最近では、スマートフォン向け無料通話・メールアプリ「LINE」の台頭で、さらにコミュニケーションの形態が変わってきました。このアプリを使えば、電話帳に登録している家族や知人との通話やメッセージのやり取りは原則無料になります。電話番号を介したコミュニケーションなので、メールアドレスも不要です。LINE利用者の数は国内外で7500万人と急増しており、通信料や通話料収入を成長の糧としてきた通信会社の経営基盤を大きく揺るがそうとしています。

 ネーミングと言えば、通信会社のことを業界では「キャリア」と呼んできました。文字通り、「運ぶ人」であり、「管」です。キャリアが通信産業の頂点に君臨し、端末やサービスの開発を主導する時代は終わろうとしています。こちらはむしろ管という本来の意味に先祖返りしようとしているのかもしれません。この危機をどう乗り越えるか。NT Tドコモ、KDDI、ソフトバンクは異なる道を歩き始めたようです。各社の動きを追うことで、通信の未来が透けて見えてきます。

(山川 龍雄)

日経ビジネス2012年12月3日号 1ページより目次

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