1890(明治23)年、東京~横浜間に日本で初めての電話が開通した。それから1世紀たった1996年、固定電話の加入者数は6153万件でピークアウトする。
 携帯電話が登場したためだ。だが「ケータイ」の時代はさらに短かった。16年後の今年、スマートフォンの国内出荷台数は初めて従来型携帯電話を逆転する見通しだ。米アップルの「iPhone」の登場からわずか5年で通信業界の風景は一変した。
 ソフトバンクによる米携帯電話大手買収などで通信業界は表面的にはホットだ。NTT、KDDIを加えた国内3社の売上高の合計は17兆3000億円、営業利益も2兆3000億円を超し、いずれも高収益企業の上位にランクする。だが背後では深刻な地盤沈下が進行している。
 1億人のポケットに入り込む携帯端末や、日常生活に不可欠なアプリやソフトなどのサービス基盤の両方を海外企業に握られ、通信会社は単なる「土管」に成り下がる危険にさらされている。かつて経験したことがない環境変化に通信会社はどう向かい合うのか、3社トップのインタビューを交えてトンネルの先を探る。

(編集委員 小板橋 太郎、原 隆、白石 武志)

CONTENTS

ケータイ新三国志
「土管」にはならない

土管化は宿命か
消耗戦続く固定通信

勃興する新勢力
増殖する「通信会社」

日経ビジネス2012年12月3日号 24~25ページより目次