キーコーヒーが喫茶店「銀座ルノアール」と提携する。狙いは卸売事業の安定化と郊外型の新規業態の開発。セルフ型カフェが盛況の中、「昭和の喫茶店」に勝算はあるか。

 キーコーヒーと喫茶店チェーンの銀座ルノアール(東京都中野区)が資本・業務提携することで合意した。キーコーヒーは2013年1月にも、ルノアールの筆頭株主である花見煎餅(東京都中野区)の全株式を取得、ルノアールの発行済み株式数の約21%を間接保有することになる。

 キーコーヒーは以前から、ルノアールの各店舗にコーヒー豆のほか砂糖、紙ナプキンといった喫茶商材を卸していた。今回の提携で、今後はルノアールの商品開発や出店戦略の面でも協力する。キーコーヒーと取引がある全国の個人喫茶店などには、ルノアールのノウハウをフィードバックする。

 キーコーヒーは2012年3月に、洋菓子の販売や喫茶事業を営むアマンド(東京都港区)の飲食・物販事業を買収している。相次いで喫茶チェーン店を傘下に収める背景には、喫茶市場における個人経営店の弱体化がある。

 現在、キーコーヒーが手がける業務用の卸売事業は同社の売上高の4割を占める。だが、卸し先である個人経営の喫茶店の数は年々、減少傾向にある。

キーコーヒーは「銀座ルノアール」提携でフルサービス型喫茶店の復権を狙う(写真:古立 康三)

 他方、勢力を増すのが「スターバックスコーヒー」など、レジカウンターで支払いを済ませて飲み物を受け取るセルフサービス型のコーヒーチェーンだ。これらチェーン店の多くはコーヒー豆の調達から焙煎、販売までを自社で賄う。ここに卸売業者の入り込む余地はない。

 キーコーヒーは関東近郊を中心に店舗を構えるルノアールを傘下に収めることで、卸売事業の安定化を狙う。

 キーコーヒーがルノアールとの提携に込めるもう1つの狙いは「昭和型喫茶店の復権」だ。同社は、ルノアールの既存店が位置する都市部はもちろん、住宅街やロードサイドにも照準を当て、セルフ型のカフェとは一線を画した喫茶店需要の掘り起こしを急ぐ。

 今後の試金石となりそうなのが、ルノアールが現在、埼玉県朝霞市で開発を進めている新業態店「ミヤマ珈琲」だ。12月下旬にオープン予定のこの店舗のイメージは、まさに「昭和の喫茶店」だ。

狙うは「地域密着型の純喫茶」

 ミヤマ珈琲では、店内の席に間仕切りを用意し、会話がしやすい空間を提供する。団体客が利用しやすいテーブル席や半個室も設け、地域コミュニティーの利用を促す。駐車場を完備し、喫煙者にも配慮。禁煙の喫茶店が増える中、98席のうち3割近くは喫煙席になる予定だ。

 キーコーヒーでは「少子高齢化が進む中、地域に根ざしたフルサービス型の喫茶店の需要は増えていく」(同社広報)と見る。同社は今後5年間で、ルノアールの運営する喫茶店を現在の110店舗から倍増させる計画で、新規出店のうち半数近くは、郊外型喫茶店が占めると見られる。当初は試験的に直営で出店するが、ゆくゆくはフランチャイズチェーン化も検討している。

 ただ、郊外中心のフルサービス型喫茶市場にも強力なライバルが存在する。現在、東海地区を中心に「珈琲所 コメダ珈琲店」を450店舗ほど展開するコメダ(名古屋市)だ。同社は「数年以内に1000店舗出店」を目標に掲げ、最近は神奈川県や東京都内にも出店攻勢をかけている。

 最近ではコンビニエンスストアが入れたてコーヒーの販売に力を入れるなど、コーヒーを巡る競争が熾烈になっている。その中で、キーコーヒー傘下となったルノアールがどのように存在感を示すのか。セルフ型に押されているフルサービス型喫茶店の価値を訴求し、需要を拡大できるかに成否がかかっている。

(瀬戸 久美子)

日経ビジネス2012年12月3日号 20ページより目次

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