ブルガリ銀座タワーの外壁にセルペンティ(ヘビ)のイルミネーションを施し、独自性を訴求する(写真:山本 琢磨)

 仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループに入り、ベルナール・アルノーCEO(最高経営責任者)の下で高級ブランドグループの基盤を作ってきた。これまでに私は、北米ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオール、フェンディなどのCEOを歴任し、いくつかのブランド買収にも関わってきた。そして今年2月、2011年にグループ傘下に収めたイタリアの宝飾ブランド、ブルガリのCEOに就任した。

 欧州の経済低迷や中国の景気減速など、世界経済に明るい話題は乏しい。けれどもLVMHグループは、2008年のリーマンショックから回復し、順調に成長を続けている。

 リーマンショックでは多くの企業が苦境に立たされた。2011年の東日本大震災では、地震と津波によって日本経済も大きな打撃を受けた。しかし、その間にも我々は世界各地で、そして日本でも投資を続けてきた。それが、今の好業績に反映されている。

 ブルガリはこの数年、中国に集中的に投資を続けてきた。十分に市場を開拓することができたため、今後は経済成長が期待できるブラジルやトルコを開拓しようと考えている。

強みを伸ばしてブランドを再生

 成長の可能性がある地域に積極的に投資すること。これは、我々が様々なブランドを抱えるコングロマリット(複合企業)だからこそできることであろう。「創業家による家族経営から、コングロマリットの傘下に入るとブランドの魅力が失われるのではないか」。こんな質問を受けることも多い。だが我々LVMHグループは、過去にも数々のブランドを傘下に収め、再生を遂げてきた。クリスチャン・ディオールやセリーヌ、ロエベ、フェンディ、そして2011年にグループに加わったブルガリ…。これらすべてのブランドが、LVMHグループに加わってから、さらなる成長を遂げている。

 これは、各ブランドが持つ特徴や強みを最大限に生かしてきたためであろう。LVMHグループのアルノーCEOは日頃から、「ブランドの持つ特徴を最大限に生かして、根源に戻れ」と繰り返している。実際、LVMHグループを見ると、買収したブランドのすべてに強い歴史があり、創造性や卓越性、独自性を備えている。

 決してほかには真似ができない要素があるか。これを基準にグループに加え、そして買収後は各ブランドの持つ独自性を一層伸ばすように心がけてきた。ほかとは違う、独自の世界観があるからこそ、消費者はそれぞれのブランドに魅了されるのだ。故に、我々のグループは成長を遂げている。

 だがほかの産業に目を転じると、企業の再編や統合によって、独自性が失われるケースも少なくはない。例えば米ゼネラル・モーターズ(GM)に代表される自動車産業や、米P&Gに象徴される日用品業界。両者とも、いくつもの企業を傘下に収めてきた。だがそれによって、それぞれの企業が有する独自性が薄れ、似たような製品ばかりが市場に出回るようになった。

 日本ではこれまで、欧米ほど企業の再編・合併は活発ではなかった。それでも電機業界などを見ると、ライバル同士が互いを模倣し合った結果、製品のオリジナリティーが薄れてしまったように見える。これこそ、日本企業が世界で競争力を低下させた要因ではないだろうか。

 「単一化」や「模倣」の罠に陥らず、自分たちの持つ独自性を守り、磨きをかけること。「ほかと違う」という勇気を持つことこそ、今、あらゆる産業に求められていることだろう。

マイケル・バーク(Michael Burke)氏
マイケル・バーク(Michael Burke)氏 仏EDHEC経営大学院でMBA(経営学修士号)を取得。LVMHグループではクリスチャン・ディオールやフェンディなどのCEOを歴任し、2012年2月から現職。

日経ビジネス2012年12月3日号 140ページより目次