中間層の低迷、就職できない若者、積み上がる公的債務、膨らむ社会保障費。大統領選で俎上に載った課題は、日本にも共通する。財政赤字の削減に向け、野田佳彦政権は消費増税を決めたものの、山積する課題への抜本策は先送りされたままだ。米大統領選から学べる点はあるのか。

 「国民の政治への参加意識を高める制度と土壌をどう整備するか」と指摘するのは、2008年から選挙ボランティアとしてオバマ陣営に参加してきた明治大学教授の海野素央だ。陣営の一員として、これまで約4200軒の家庭に戸別訪問し、オバマ支持を訴えてきた。その体験から海野が感じたのは、「米国民は政府のあり方や政策に対して明確な自分の考えがあり、選挙はそれを表明する場である」との意識を持っていることだという。

 予備選から数えると1年以上をかけて大統領選候補者を絞り込む米国に対し、国政選挙でさえわずか2週間の選挙運動期間しか与えない日本。候補者だけでなくボランティアが戸別訪問し政策を訴える米国に対し、戸別訪問が禁じられ選挙カーから一方的に名前を連呼する日本。どちらの有権者が争点を深く理解し、候補者の考えを吟味して投票所に向かうか。

 米大統領選に対しては、投じられる巨額の費用や対立候補間の中傷合戦など、負の側面も指摘される半面、時の争点について草の根レベルでも徹底した議論が戦わされる。

 直接参加型民主主義から国を発展させてきた米国がどう民意を形成しているのか。国民の利害が多様化している日本にとって、学ぶべき点は少なくない。

日経ビジネス2012年11月19日号 46ページより

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