西友で、登録販売者の受験資格を巡る大規模な不正が発覚。「組織ぐるみでない」という主張を疑問視する関係者は多い。制度の施行から4年。その意義が問われている。

 米ウォルマート・ストアーズ傘下の大手スーパー西友で、薬の登録販売者試験の受験資格を巡る大規模な不正が発覚した。同社は11月6日、薬の登録販売者に合格した従業員200人について、同試験の受験に必要な実務経験を満たしていないにもかかわらず、「実務経験証明書」を発行していたと発表した。

 登録販売者はリスクが比較的低いとされる第2類、第3類の一般用医薬品(大衆薬)を販売できる資格。受験するには1年間の実務経験を積んだうえ、店舗の開設者及び店舗などの管理者に実務経験証明書を発行してもらわなければならない。

 西友の金山亮・執行役員は会見で、「社内のチェック体制の不備が最大の原因。組織ぐるみで(不正を)やっていたということはない」と強調した。しかし、西友側の「組織ぐるみではない」という言葉を額面通りに受け止める関係者は少ない。

 「実務経験を承認をするのはあくまで会社。分からなかったはずがない」。西友の薬売り場で働く、ある登録販売者はこう話す。

 あるドラッグストアの店舗開発担当者は「西友が薬の売り場を増やしていたのは、業界で有名だった」と言う。実際、金山執行役員も「薬が重要な取扱品目だったのは事実だ」と認める。

 薬は一般的に生鮮食品などと比べて粗利益が高く、消費者の高齢化や健康志向の高まりによって、売り上げ増も見込める。デフレ環境下で価格競争に明け暮れるスーパーにとっては、何としても拡大したいカテゴリーの1つだ。

 だが、薬を売れる登録販売者はドラッグストアや薬局、コンビニエンスストアなどでもニーズがあり「人材は不足気味」(人材紹介サービス会社)。

 大量の人材を自社養成するのも簡単ではない。制度の開始以来、約11万人の登録販売者が誕生しているが、その多くはドラッグストアで働く。ここでは必然的に大衆薬の販売に携わることになるので、実務経験を積むのが容易だからだ。一方、スーパーの売り場は多岐にわたる。実務経験を積ませようにも、大衆薬の販売ばかりに従業員を割けないのが実情だ。

登録販売者の不正受験で謝罪する西友幹部(左)。同社店舗ではドラッグストアを意識した店内広告が(右)(写真左:共同通信)

不正は氷山の一角か

 登録販売者試験の不正受験は過去にも発覚している。例えば、今年3月には和歌山県で、薬局が発行した実務経験報告書で虚偽が判明し、登録販売者の合格が取り消されている。

 不正が頻発したのは、これまで実務経験を客観的に確認できる書類の提出が求められておらず、会社側の都合で証明書が発行できる状態が続いていたからとも言われる。不正頻発を受けて、厚生労働省は制度を厳格化。今年度の試験から、出勤簿など労働時間に関する書類の提出が義務づけられるようになった。

 ただ、厚労省の関係者は「申請はあくまで善意に基づくもの。すべてをチェックするのは不可能」とこぼす。「不正に証明書を発行している企業はまだある」と指摘する関係者は今も多い。

 登録販売者の資格が創設された背景には、大衆薬の売り場に薬剤師などの専門家がいないという「薬剤師の不在問題」があった。だが専門家を養成するはずの試験で不正が頻発しては、資格の信頼性そのものが危うくなる。登録販売者制度を定めた改正薬事法が施行されて4年。制度の意義が改めて問われている。

(飯山 辰之介)

日経ビジネス2012年11月19日号 20ページより目次

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