韓国・現代自動車が米当局から燃費の過大表示を指摘された。日本車に負けない燃費を宣伝し販売を伸ばすも、ぼろが出た。研究開発体制を抜本的に立て直す必要がありそうだ。

 米環境保護局(EPA)は11月2日、韓国・現代自動車と傘下の起亜自動車が燃費性能を過大に表示していたと発表した。対象となったのは、2010年後半から両社が米国で販売した自動車の35%に相当する90万台。EPAは「2000年以降、燃費の訂正を求めたケースは2件あったが、今回のように大規模な事例は初めて」と言う。

 現代自の韓国本社の広報担当者は「燃費試験の方法にミスがあった。北米以外では正しく表示していた」として、意図的な燃費操作を否定する。

世界5位に浮上するも…

 現代自は2009年頃から世界で急速に販売台数を伸ばしている。2011年は660万台に達し、米ゼネラル・モーターズ(GM)、独フォルクスワーゲン(VW)、トヨタ自動車、仏ルノー・日産自動車連合に次ぐ、世界5位の自動車グループに成長した。

 現代自はグループの成長を牽引する米国市場で2009年後半にリーマンショック前の水準まで販売を回復させると、2010年からはほぼ半期ごとに過去最高の売り上げを更新した。だが、その原動力の1つが誇張された燃費性能であった可能性がある。

 米国では1ガロン当たり40マイル以上の燃費性能を持つ自動車が、一般的にエコカーと見なされている。日本車の中ではトヨタのHV(ハイブリッド車)「プリウス」や、ホンダの小型車「シビック」などがこの基準を達成している。

 今回、問題が指摘された現代自と起亜の合計13車種のうち、6車種で最高燃費40マイルを達成したとされていた。日本メーカーなど競合他社に負けない燃費性能を宣伝するために公表値を意図的に水増ししていた、と疑う向きもある。現代自の広報担当者は、「販売への影響度合いを判断するには時期尚早」と言うが、米国市場での信頼低下は免れないだろう。

日本への技術依存に限界

 今回EPAの指摘によって、現代自の「ソナタ」のHVモデル(2012年型)や、起亜の「オプティマ」のHVモデル(同)でも、40マイルを達成できていないことが明らかになった。

 このように多くの車種で燃費性能が引き下げられたことから、日本の自動車業界からは 「現代自の研究開発力の低さが露呈した」との声が上がる。現代自の研究開発費は売上高の2%程度にすぎず、トヨタやホンダの5%前後を大きく下回る。その代わりにマーケティングやデザイン部門、工場の自動化設備などにより多くの費用を割り当てている。

 現代自の研究開発部門はコストをあまりかけない一方で、日本の自動車メーカーを退職した技術者を積極的に雇用して、技術指導などを受けている。ホンダのあるOBは、「現代自から『研究開発部門の要職として迎え入れたい』との誘いを受けている」と明かす。ただし、日本の技術をそのまま取り入れるだけでは、日々進歩を重ねる日本車を性能面で超えることは難しい。

 現代自は来年からフルモデルチェンジする車種を増やして、世界市場で攻勢を強める計画だ。とはいえ、燃費性能は消費者が自動車を選ぶ際に最も重視する項目の1つになっている。今よりもさらに上を目指すには、研究開発体制の抜本的な見直しが避けて通れなくなるだろう。

(吉野 次郎)

日経ビジネス2012年11月19日号 24ページより目次

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