領土問題の解決は難しいが、武力衝突は避けなければならない。この二律背反の連立方程式を解く方法はあるのか。日本や中国の海洋政策に精通する気鋭の学者に聞いた。

(写真:村田 和聡)

 問 尖閣諸島周辺の海に中国公船が頻繁に侵入している。不測の事態がいつ起きるか分からない。

 答 領土問題に落としどころはない。「話し合いで解決すべきだ」と言う人がいるが、中国は話し合いに乗る相手ではない。それは、これまでの歴史を見れば明らかだ。

 日本は鄧小平の「棚上げ論」を後生大事に守ってきた。だが、中国は「棚上げ」と言いつつも、1992年に領海法を制定し、尖閣諸島を自国の領土と定めた。この段階で、日本で言う国有化と同じ状態になっている。

 中国の海洋政策をウオッチしている人間から言わせれば、中国は「棚上げ論」を気にも留めていない。

 問 現実解はあり得るのか。

 答 私は尖閣諸島を海洋保護区にすることを提案している。具体的には、生態系の保全や水産資源保護などの名目で国家管理水域に指定する。これを国連に届け出て、国連の調査団を入れる。そのうえで、徹底した入域制限を実施する。

 その際には、日本漁船だけでなく、中国や台湾の漁船にも同レベルの漁獲高を割り当てる。つまり、日本自身が資源利用に制限をかけることで、中国の動きを封じ込める。現状、日本は尖閣諸島周辺の資源をそれほど利用してはいないので、大きな痛手ではない。中国の方が打撃を受けるはずだ。

 問 中国が黙っているか。

 答 2010年に愛知県で開催された生物多様性条約第10回締約国会議は、2020年までに世界の海域の10%を保護区にするという目標を設定した。さらに日本に対して、より広い海域に海洋保護区を設定するように要請した。この国際的な枠組みの中で東シナ海に海洋保護区を設定し、正当性を認めさせるわけだ。鄧小平が提唱した棚上げ論ではなく、海域の利用そのものを制限してしまった方がよい。

日経ビジネス2012年11月12日号 47ページより

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