尖閣諸島を巡る問題が、日本企業の「今」のビジネスに甚大な影響を与えている。しかし、この影響は今だけにとどまらない。「島」の問題は、日本経済の「将来」の成長をも危険にさらす。

 なぜなら島は、「海」でもあるからだ。海は資源の宝庫だ。海中には魚がすみ、海底やその地下には多様な鉱物資源が眠っている。「陸」にはほとんど資源を持たない日本も、海には膨大な資源を持つ。これらの資源が、日本経済の将来を支える柱の1つになる。

 世界の国々は、国土を形成する島を基点にEEZ(排他的経済水域)と大陸棚を設定できる。この海域では、資源に関して主権的権利を有する。すなわち、島=海=資源という等式が成立する。ある専門家は「分かりやすく言えば、島を取れば資源を総取り」と表現する。日本も、この権利を行使している。しかし、尖閣諸島の問題などが原因で、東シナ海ではこの等式が成立していない。

 等式が成立していないのは、東シナ海だけではない。北方4島を巡っては、ロシアとの間に領土問題を抱えている。日本海に浮かぶ竹島の領有権は、韓国と争う状態にある。

 これらの島を守ることは、領有権やプライド、愛国心の問題にとどまらない。将来の日本経済、将来の我々のビジネスに直結する。「領土」問題は「経済」問題でもある。

(森 永輔、宮澤 徹、鵜飼 秀徳、張 勇祥、篠原 匡、北京支局 坂田 亮太郎、香港支局 熊野 信一郎)

CONTENTS

海洋資源大国への挑戦

尖閣諸島
中国がにらむのは米国

竹島
新政権もリセット困難

北方領土
忍び寄る韓国企業

与那国島
最西端の島に自衛隊

南鳥島
真円を描くEEZの威力

沖ノ鳥島
300億円の「鉄壁」で守る

領土紛争の処方箋
「強い日本」がすべての解

日経ビジネス2012年11月12日号 40~41ページより目次