イブニングジャズ・フォー・オバマ。10月下旬の週末、ニューヨークのあるジャズクラブでこんなイベントがあった。その名の通り、米大統領選で共和党のミット・ロムニー候補を迎え撃つバラク・オバマ大統領を支援するものだ。

 マンハッタンの会場に集まった70人ほどの聴衆は約2時間半、手弁当で駆けつけたプロのジャズミュージシャンによる演奏を楽しんだ。1人30ドルのチケット収入は必要経費を除いてオバマ陣営への献金となる。

ニューヨークで開かれたオバマ支援のジャズイベント。音楽産業にはオバマ支持者が多い(写真:常盤 武彦)

 長期間にわたる戦いも大詰めを迎え、11月6日に一般投票を控えた大統領選。ギリギリまで意中の候補を応援するこんなイベントが全米各地で繰り広げられた。冒頭のジャズに限らず、エンターテインメント業界はおおむねオバマ支持が多い。5月に映画俳優のジョージ・クルーニーが主催した支援パーティーでは、一晩で1500万ドル集めたことが話題になった。

 大統領選の候補者は全米各地に選挙事務所を置き、様々な職種のスタッフを採用する。多額の費用を投じて各メディアに大量の選挙広告を出すのも重要だ。党の予備選を含めると1年以上、大々的な選挙活動を続けることになる。必要な資金をどうかき集めるか。それが勝敗を左右する。オバマ大統領の強みとされる個人の小口献金はなお健在だが、資金の出し手としては企業の動向も注目点となる。

 その点、今年目立ったのはロムニー支援だった。筆頭は金融業界だ。政治監視団体「オープンシークレット」がまとめている統計ではウォール街のロムニー傾斜が際立つ。ロムニー候補の資金管理団体に対する献金額上位の顔ぶれには、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレーなど米金融大手が占める。

 ウォール街がアンチオバマに転じたのは、金融規制改革法の存在がある。規制強化に反対するウォール街の抵抗もあって、実施するための細目が固まっていないが、法案自体は2010年7月に可決・成立している。

 アンチオバマとして旗幟を鮮明にしたもう1つの業界は化石燃料産業だ。オープンシークレットの産業セクター別の献金額集計では、ロムニー候補が「エネルギー・天然資源」産業から859万ドル*1の資金を集めたのに対し、オバマ大統領は216万ドル(同)に過ぎない。これはPACと呼ばれる両候補の資金管理団体に対してのみの数字であり、今回の大統領選から認められた「スーパーPAC」と呼ばれる事実上の別動隊も巨額の資金集めをしているので、献金額の差はさらに広がる。代替エネルギーの育成を進めようとしたオバマ路線に対する業界の危機感が背景にある。

*1=10月25日時点

IT産業はオバマ支援

 もっともオバマ大統領の味方がいないわけではない。西海岸を中心とするIT(情報技術)産業にはオバマ支援が多い。金融大手が名を連ねるロムニー候補と違ってオバマ陣営への献金上位にはマイクロソフトやグーグル、アップルの名前がある。こうした大手以外でも、リンクトイン創業者のリード・ホフマン氏らがオバマ再選を応援するキャンペーン「テクノロジー・フォー・オバマ」を立ち上げるなどしている。

 10月に3回開かれたテレビ討論会は、オバマ大統領の2勝1敗とされているが、初回の大敗で両者の差は縮小し、選挙戦はまれに見る大接戦になっている。オバマ1期目を踏まえ各産業がそれぞれの候補を応援する今回の大統領選。投票は11月6日に行われる。

細田孝宏のコラムは日経ビジネスオンラインにも掲載します。
日経ビジネス2012年11月5日号 112ページより目次

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