低コストと豊富な労働力を求めて、世界のアパレル産業が行き着いた先はバングラデシュでした。最低賃金が中国の3分の1以下というこの国は今、「世界の縫製工場」と言われています。今号の特集ではバングラデシュの取材を敢行し、衣料品製造大手AKHグループや香港のアパレル商社、利豊(リー&フォン)の実態に迫りました。「ザラ」を傘下に抱える世界最大のファッショングループ、インディテックスの研究も含め、ファストファッションの舞台裏をお見せします。

 アパレル業界におけるAKHや利豊は、電機業界における台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の位置づけと似ています。低コスト、短納期を武器に世界のアパレルメーカーから生産を受託し、いつの間にか発注元を脅かす巨大企業になりました。生産国での過酷な労働実態が問題になっている点も重なります。今号では鴻海の中国工場の労務トラブルについても翻訳記事で触れました。併せてお読みいただくことで、世界の先端を行くサプライチェーンの光と影の部分が浮き彫りになります。

 ジャスト・イン・タイムという言葉が象徴するように、サプライチェーンは日本が十八番としてきた分野です。しかし、ここへきて、日本企業よりも安く、速く作る術を身につけたライバルが数多く出現するようになりました。我々はこの分野をもっと研究する必要があります。売れ筋が目まぐるしく変わり、価格競争も激しいアパレル産業は、究極のサプライチェーンを追い求め、進化を遂げてきました。モノ作りの未来を考えるうえで示唆に富む題材だと考えています。

(山川 龍雄)

日経ビジネス2012年11月5日号 1ページより目次

この記事はシリーズ「編集長の視点」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。