赤字のテレビ事業の再建を急ぐ国産メーカー。ソニーは高解像度の「4K」で巻き返しを図る。先行する東芝の価格戦略が市場の行く末を左右しそうだ。

ソニーは、シーテック ジャパンで「4K」テレビの展示に注力(上)。東芝は、50~84インチまで3種類の4Kテレビを来春に発売する(写真:時事通信)

 多くの来場者が食い入るように眺めている――。視線の先にあるのは、フルハイビジョン(HD)の4倍の解像度を備える「4K」対応、84インチの液晶テレビ「ブラビア」。10月2日から6日、千葉・幕張メッセで開催された電機・IT(情報技術)の国際見本市「CEATEC JAPAN(シーテック ジャパン) 2012」のソニーブースでの光景だ。

 11月下旬に発売される新しいブラビアの売り物は、高精細、大画面、3種類10個のスピーカーによる高音質。新型ブラビアが生み出す臨場感を体感しようと、来場者が足を止める。

 メーンのスペースに4Kテレビを展示したメーカーはソニーだけ。同社は、4Kブラビアを次世代テレビのフラッグシップとして日本や欧米、中国など全世界に展開する。「高画質・高音質を実現する4Kテレビの需要は高く、確実に立ち上がる」(ソニーの今村昌志・業務執行役員)。

 ソニーは、4Kという高付加価値商品を前面に打ち出すことで、テレビ低価格化路線との決別を目指す。「4Kブラビアを象徴にして、世界で再び高級テレビメーカーとしての認知度を高め、シャワー効果で既存の薄型テレビの拡販につなげたい」(ソニーのテレビ事業担当者)。

 とはいえ4Kブラビアは日本で168万円、欧州で2万5000ユーロ(約255万円)とテレビとしては高価。同社は4Kブラビアの販売目標を公表しないが、「まずは世界で年間1万台ぐらいを目指す」(ソニー関係者)。仮にこの数値を達成しても売り上げは約200億円で、テレビ事業の売上高の2%程度。4Kブラビアがテレビ事業の収益に貢献するのはまだ先になりそうだ。

 4Kテレビに対する各社の取り組みには温度差がある。パナソニックやシャープは商品化の時期を明言していない。現時点では、ソニーの強敵は、昨年12月に他社に先行して4Kテレビを商品化した東芝になりそうだ。

東芝4Kテレビの価格がカギ

 「既に4Kテレビの時代は来ている」。東芝の深串方彦・執行役専務はこう強調し、同社は4Kテレビの第2世代となる商品を来春に世界で発売する。第2世代は、新たな画像処理チップを搭載し、通常のHD画質で収録したブルーレイ・ディスク(BD)のソフトを、4K並みの画質に高められる。4Kテレビの普及の壁とされる高画質コンテンツ不足を解消できる。

 4Kテレビをテレビ事業の象徴的存在とするソニーに対し、東芝は4Kテレビを薄型テレビのハイエンド製品として本格的に普及させようと目論む。

 9月27日、東芝の第2世代製品よりも数時間早くソニーが4Kテレビを発表したが、東芝は価格の発表を見送った。ソニー製品の販売動向を見ながら、戦略的な価格を設定する考えのようだ。「東芝の値付け次第では、4Kテレビ市場も早い段階で低価格競争に陥る。社会インフラ事業を本業とし、テレビメーカーとしては“伏兵”である東芝の動きは、ソニーにとって厄介だろう」(電機業界アナリスト)。

 4Kがテレビ事業を立て直す足がかりになるのかどうか。ソニーと東芝の4Kテレビ戦争は序盤戦から熱いものになりそうだ。

(戸川 尚樹、阿部 貴浩)

日経ビジネス2012年10月15日号 14ページより目次

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