国家間の緊張が、企業に試練を与えている。尖閣諸島の国有化に端を発した日中関係の悪化で、巨大市場・中国の多くの消費者が「日本製」を避けている。互いに譲歩が難しい「領土」を巡る問題だけに、解決は簡単ではない。
 しかし、「ハローキティ」ならどうだろう。サンリオの店舗は、中国で反日デモが頻発しても被害はなかった。日本人が訪問したある中国の家庭では、子供と日本人でドラえもんの歌の合唱が起きたという。相手を尊重する気持ちを思い出させる力を、日本の文化は持っている。


ハローキティ
「カワイイ」の代名詞 レディー・ガガもファン

 米ハードロックバンドのKISSとのコラボレーション――。日本の「カワイイ」の代名詞的存在であるハローキティの異色の挑戦だ。

海外進出年:1976年(米国)、価格:11.99ドル(約940円、米国、写真の商品1体)、サービス展開国・地域:109(写真:竹井 俊晴)

 サンリオは数年前からライセンス事業に舵を切った。キティをアパレル製品などにあしらうことを許諾し、ロイヤルティー収入を得る。提携商品は大きく増え、5年ほど前まで数百社だった取引先は、現在2000社以上と見られる。

 特に昨年売上高が伸びたのが北米市場。流通大手のウォルマート・ストアーズではアパレル製品販売が始まった。前述のKISSとのコラボも北米強化の一環。レディー・ガガ、マライア・キャリー、アヴリル・ラヴィーンなど発信力が強いセレブ層にキティファンは多い。中南米など新興国開拓も進む。2014年には現地企業へのライセンス供与により、中国浙江省でテーマパークも建設する。


ガンプラ
各国のガンダム好き魅了 世界観とともに訴求

海外進出年:1990年代(本格展開)
価格:2000円前後(平均の購買価格)
販売国・地域:中国、韓国などアジア、欧州、北米
©創通・サンライズ


スケールモデル
模型ファンが憧れる 世界随一のモデル

(写真:竹井 俊晴)
海外進出年:1960年代
価格:28.98ユーロ(約2962円、戦車WWII Sturmgeschütz III Ausführung G Finnland 1942, Bausatz 1:35の独アマゾンでの販売価格)
販売国・地域:欧州など


ベイブレード
現代版「ベーゴマ」 累計販売数は3億個

(写真:竹井 俊晴)
海外進出年:1999年(台湾)、2001年(北米)
価格:1000円前後(米国での平均の購買価格)
販売国・地域:アジア、欧米など90以上


シルバニアファミリー
日本のロングセラー商品 海外の女の子も支持

(写真:竹井 俊晴)
海外進出年:1986年(英国)
価格:2700ルーブル(約6800円、ロシア、「はじめてのシルバニアファミリー」)
販売国・地域:ロシアなど44


大英博物館公式販売モデル
歴史好きも納得する 精巧なミニチュア

(写真:竹井 俊晴)
海外進出年:2003年(大英博物館向けに販売)
価格:5.99ポンド(英国、約760円)
販売国・地域:英国


トランスフォーマー
クルマがロボに変形 映画化で人気に拍車

(写真:竹井 俊晴)
海外進出年:1984年(米国)
価格:2000円前後(米国での平均の購買価格)
販売国・地域:欧米、オセアニア、アジアなど

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 日本発の玩具には世界で愛されている商品が多い。その代表格が、タカラトミーが1984年に米国で発売し、絶大な支持を集めたトランスフォーマーだ。自動車や動物をロボットに変形させて遊ぶ玩具で、世界での累計販売個数は5億個に上る。

 「トランスフォーマーには類似品では真似できない完成度の高さがある」とタカラトミーの池田哲也・執行役員は胸を張る。例えばパーツをバラバラにしたり、新たなパーツを加えたりすることなく、クルマや動物をロボットに変形させることができる。その開発には精密な設計能力と高い創造性が要求される。

 こうした技術力の高さは、特に模型の分野で世界に知られる。世界の模型ファン憧れのブランドは、静岡県に本社を持つタミヤのスケールモデルだ。戦車などが欧州で人気が高いという。

 精巧さでおもちゃの領域を飛び越えた良品もある。フィギュアや模型の製作で知られる海洋堂は80年代に米国自然史博物館の依頼で、古代の恐竜、カミナリ竜の復元生態模型を製作し話題を呼んだ。現在は大英博物館のミュージアムショップ向けに、エジプトの出土品などの公式フィギュアを製作しており観覧者に人気だという。

玩具の細部までこだわり

 精巧さに加えて、長く遊べるよう、細やかな配慮がなされている点も日本の玩具が人気を集める要因だ。象徴的なのは、タカラトミーが99年から海外展開している「ベイブレード」。発売以来、90カ国・地域以上で累計3億個を売り上げた。基本コンセプトは日本の伝統的な玩具、ベーゴマにある。それに改良を加え、現代に蘇らせた。例えばベイブレードでは「ランチャー」というアイテムを使うことで、誰でも容易にコマを回せる。

 女の子向けの玩具でも、細部にこだわってヒットしている商品がある。エポック社の「シルバニアファミリー」だ。近年ではロシアでの売り上げの伸びが顕著という。人形の動物たちがミニチュアの家で暮らすのを楽しむ。家具は細かな部分まで再現されており、例えば水道台の戸棚を開けると、きちんと水道管が収められている。こうした配慮があるからこそ、子供たちはその世界にどっぷりと入り込める。

 日本製玩具の世界展開の助けになっているのが、良質なコンテンツの存在である。人気アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズのプラモデルを製作するバンダイは、10カ国・地域で展開している「SDガンダム三国伝」で、短い漫画を商品に同封している。「メディアが貧弱な地の子供たちにもガンダムの世界観を知ってほしい」と同社ホビー事業部海外マーケティングチームの高橋慶修マネージャーは言う。

 日本の玩具は海外の子供の心をつかむ。彼らは大人になっても日本への親しみを持ち続けてくれるだろう。

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ドラえもん
世界に愛される 猫型ロボットのコミック

(写真:竹井 俊晴)
海外進出年:1991年(インドネシア)
価格:1万6500ルピア(約135円、インドネシア、単行本1冊)
販売国・地域:中国、台湾、フランスなど15

DORAEMON©Fujiko-Pro/Shogakukan Inc.


ポケットモンスター
「Pokémon」は世界の共通言語

海外進出年:1998年(米国)
価格:34.99ドル(約2700円、北米、ゲーム最新作の価格)
販売国・地域:米国、欧州など

「ポケットモンスター」 ©2012 Pokémon.©1995-2012 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc. ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。 ©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon



NARUTO-ナルト-
海外ファンを魅了する 忍者活劇

(写真:竹井 俊晴)
海外進出年:2003年(台湾、アニメ放送)
価格:33.11ドル(約2600円、米国、フィギュア)
進出国・地域:米国、欧州など

「NARUTO-ナルト-疾風伝」©岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ



マリオ
ギネスにも載る ゲームの代名詞

海外進出年:1980年代前半
価格:39.99ドル(約3100円、米国、ゲーム最新作の価格)
販売国・地域:北米、欧州、オーストラリアなど



初音ミク
草の根革命起こす 仮想アイドル

海外進出年:2007年
価格:1万5750円(ソフトウエア価格)
販売国・地域:日本

「Illustration by KEI ©Crypton Future Media, Inc. www.crypton.net」



バイオハザード
ゲームの恐怖が ハリウッドに感染

海外進出年:1996年(北米、欧州)
価格:59.99ドル(約4700円、米国、ゲーム最新作)
販売国・地域:北米、欧州など

©CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED. 『バイオハザードⅤ:リトリビューション』公開中 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


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 漫画、ゲーム、アニメ。数多くの和製コンテンツは、日本への文化的な理解や親近感を生んできた。

 嚆矢は何といっても「ドラえもん」だ。コミックはアジアを中心に15の国と地域で出版され、アニメは放送されていない地域を探す方が難しい。

 日本勢が産業を作り上げてきたゲーム。そこから生み出された和製コンテンツも、世界に浸透している。

 最初はアーケードゲームで登場した任天堂の「マリオ」。家庭用に活躍の場を移し、今も新作が発売されるたびに大ヒットする。誰もが知る、「ゲーム」の代名詞だ。

 ゲーム、アニメ、カードゲームなどを組み合わせるビジネスモデルを一段上のステージに押し上げたのが「ポケットモンスター」。ゲーム累計販売本数は全世界で2億3000万本以上だ。

 ハリウッド大作になったゲームもある。カプコンの「バイオハザード」だ。最新機が実現した恐怖の世界は、世界レベルのクリエーターをも魅了した。

進化続けるビジネスモデル

 現在、海外で圧倒的な人気を誇るアニメ「NARUTO-ナルト-」。週刊少年ジャンプ(集英社)の人気コミックが原作の忍者物語だ。その海外人気を、革新的なビジネスモデルが支えていることはあまり知られていない。

 中国の動画サイト「土豆網」では、NARUTOの再生回数が月間1億回を超える。テレビ東京は日本の放送終了から1時間で、海外提携サイトで字幕付きアニメ配信を許諾しているのだ。

 各国の地上波放送の海外コンテンツ枠は減少傾向。日本のアニメに飢える海外ファンの需要に供給が追いつかない状況が、ネットで違法アップロードが増えた一因だった。正規コンテンツをすぐ配信すれば、課題が解決できる。

 そして今、ネットという新たな舞台で、「地殻変動」が起きようとしている。

 「初音ミク」。この仮想世界のアイドルを生んだのはクリプトン・フューチャー・メディア(札幌市)だ。音声合成技術を活用し、歌詞とメロディーを入力すれば、実際の女性が歌っているかのような楽曲が出来上がるソフトを開発した。ソフトにはキャラクターと同じ「初音ミク」という名前をつけた。

 非営利なら自由に初音ミクの音楽やイラストを創作し公開できる。全国の無名クリエーターが、初音ミクが歌う作品を次々とネット上で発表、世界的知名度を獲得した。企業主導ではなく、草の根の集合が生み出すムーブメント。常識を覆す動きが生まれつつある。

 質の高さと、時代に応じて次々に生み出されるビジネスモデル。この両輪が、世界を魅了し続ける和製コンテンツの原動力だ。

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電波時計
小型化でデザインは洗練 国際派女性の腕に光る

海外進出年:1993年(欧州)、価格:5万~7万円(米国)、販売国・地域:約40(写真:竹井 俊晴)

 日米欧中で専用電波をキャッチし時刻を調整する電波時計。アンテナなどを内蔵するためムーブメント(駆動装置)が大きくなるが、シチズン時計は直径約2cmの世界最小モデルを開発。これを搭載した女性向け腕時計「クロスシー」がヒット。今後、世界で販売拡大を目指す。



G-SHOCK
あえて武骨に、「頑丈さ」追求 世界の若者を魅了

海外進出年:1983年、価格:1万円台(米国、欧州)、販売国・地域:96(写真:竹井 俊晴)

 武骨なデザインで、「頑丈さ」を前面に出すカシオ計算機の「G-SHOCK」。来年の発売30周年を控え、世界各国で販促イベント「SHOCK THE WORLD 2012」を開いている。「より薄く、より軽く」で各社がしのぎを削る中、あえて逆張りで挑み、ロングセラーになった。「異端」を貫き、日本発の世界ブランドにつながった。



メラノリデュース(美白美容液)
「100年の美白の歴史」が アジアでの信頼性を生む

海外進出年:2006年(台湾、韓国)、価格:750元(約9375円)、販売国・地域:中国、韓国、台湾、タイ(写真:竹井 俊晴)

 初めての美白化粧品を発売したのが1917年。資生堂の美白への挑戦は、ほぼ1世紀にわたって続いている。

 白い肌を好むのはアジアも同じ。「メラノリデュース」(日本では「HAKU」)は中国や韓国、タイに広がり、「美白と言えば資生堂」という信頼性は、着実にアジアにも根づきつつある。



「HUD」カーナビゲーションシステム
「787」の技術を運転席に 走るワクワク感を再び

販売年:2012年7月(日本)、価格:約30万円、販売国・地域:検討中

 経路案内などがクルマのフロントガラス前方に映し出される「HUD(ヘッドアップディスプレー)」技術。パイオニアは7月、最新鋭旅客機「ボーイング787」などに使われていたこの技術をカーナビゲーションシステムに応用、久々の大ヒットに。最近はスマートフォンをカーナビの代替に使う人が増えているが、近未来さながらの運転席はスマホでは体験できないワクワク感がある。


温水洗浄便座
中国では「憧れの存在」 「亀の歩み」でも焦りなし

海外進出年:1986年(米国、TOTO)、価格:約5000~8500元(約6万2500~10万6250円、TOTO)、販売国・地域:18以上(TOTO)、12(LIXIL)

 国内の普及率は今や70%。温水洗浄便座は、完全に日本人の生活スタイルに定着した

 TOTOは1986年に海外進出。中国では、温水洗浄便座は「憧れの存在」だ。ここ5年の伸び率は2倍以上と成長はしているものの、絶対量はまだまだ小さいという。国産初の温水洗浄便座を開発したINAX(現LIXIL)の海外戦略も同様だ。それでも、「日本でも普及に20年以上かかった。海外でもじわじわと広がっていくはず」(TOTO)と焦りはない。



世界最速エレベーター
地震大国ならではの安全設計
速さとともに乗り心地の良さも追い求める

海外進出年:1950年(エレベーターの輸出開始)、価格:約1900万円(住宅用9人乗り、定格速度分速105m、停止箇所10カ所の場合)、販売国・地域:中国、米国、欧州など約90(注:右のエレベーターは、上海中心大厦に納入される製品とは異なる)

 分速1080mの速度で動く世界最速のエレベーターを開発、受注に成功した。納入先 は、中国の上海で建設中の「上海中心大厦」という高さ632mのビルだ。三菱電機は世界 で約90の国と地域にエレベーターを販売。世界市場における新規需要の半分があると 言われれる中国では、三菱電機が15%程度のシェアを持つ。地震や強風でもエレベータ ーが共振せず、かごを動かすロープが絡まらない設計を施す。非常時に安全に止める設 計なども含めた品質の高さで勝負する。


Tofu(豆腐)
豆腐で米国トップに 固さで7種類の品揃え

海外進出年:1983年(米国で販売開始)、価格:1.2ドル(約94円、400g)、販売国・地域:米国、カナダ

 カレールーの国内トップ企業が、なぜ米国で“畑違い”の豆腐を作るのか。その答えは30年前にある。ハウス食品はカレーを広げるために1981年、米ロサンゼルスに営業所を設立。飲食事業の傍らで目をつけたのが現地の豆腐工場だった。2006年には東海岸にも工場を造り、首位メーカーに上り詰めた。固さに応じて7種類の豆腐を取り揃えるなど、市場を牽引し続けている。



Soy Sauce(しょうゆ)
利益の7割を海外で稼ぐ 日本発祥と知らない若者も

海外進出年:1957年(米国)、価格:2ドル強(約170円、296ミリリットル瓶)、販売国・地域:米国、フランスなど100以上(写真:竹井 俊晴)

 「世界でしょうゆが売れるのは日本食ブームだから」。キッコーマンに関して言えば、この解釈は間違っている。同社が海外展開を始めたのは、ブームのはるか昔、1957年のことだ。進出当初の米国では、バーベキューをしている家を飛び込みで訪ねては、「肉料理に合う調味料です」とサンプルを渡し、現地化を図ってきた。「テリヤキソース」やフランスで人気の超甘口「スクレソース」など現地の味覚に合う商品も次々に開発。「しょうゆを日本の調味料だと知らない若者もいる」(キッコーマン)ほどだ。

 日本市場が縮小する中、営業利益の7割を海外で稼ぐ。グローバル企業になれた背景には、半世紀前に地平を拓いた営業マンの姿があった。


ヤクルト
ヤクルトレディが海外でも活躍
「生きた微生物を飲む」意義伝える

海外進出年:1964年(台湾)、価格:7バーツ(約20円、タイ)、販売国・地域:韓国、ブラジルなど31

 海外での消費本数が1日平均で2002万1000本(2011年)に及ぶヤクルト。人気の背景には日本でも定着している海外の「ヤクルトレディ」の活躍がある。彼女らが商品を持って各家庭を回ることで、「生きた微生物を飲んで健康に役立てる」というヤクルトの商品コンセプトを確実に伝えることができる。


カニカマ
能登で生まれた練り製品 世界の食卓に並ぶ

海外進出年:1976年(輸出開始)、価格:398円(「香り箱」1パック)、販売国・地域:欧州、米国、韓国、香港など

 今や世界で愛される食材となったカニ風味蒲鉾、通称カニカマ。発明したのは、石川県七尾市の練り製品メーカー、スギヨだ。1972年に発明し、国内で大流行。76年から輸出を始めた。低価格品が出回る中で、風味や香りを本物に近づけた商品も展開する。米国ではカニカマが店頭で量り売りされる光景も珍しくない。能登の企業が世界に新たな文化を根づかせた。


ジャパニーズウイスキー(竹鶴、山崎など)
「本場」で日本勢が勝負 10倍以上の成長率

海外進出年:1987年(サントリー)、2001年(ニッカ)、価格:45ポンド程度(約5700円、山崎12年)、45ユーロ程度(約4590円、竹鶴12年)、販売国・地域:約30(サントリー)、約30(ニッカ)

 ジャパニーズウイスキーは、スコッチなどと並ぶ「世界5大ウイスキー」に数えられる。これまでは海外での認知度は低かったが、ここ数年で日本勢が拡販に本腰を入れ、評価が高まっている。

 ニッカウヰスキーの「竹鶴」は、英国の国際的なウイスキー品評会で、4年連続で世界最高賞を受賞。2006年の欧州販売数量は1800ケースだったが、昨年は約14倍の2万5500ケースに急伸している。「山崎」をはじめとしたサントリー製品も同様で、2006年比で約10倍の規模になっている。



リポビタンD
栄養ドリンクの「元祖」 世界でもロングセラー

海外進出年:1963年(台湾)、価格:12バーツ(約31円、タイ)、販売国・地域:タイ、マレーシアなど16

 世界の飲料市場を席巻するエナジードリンク「レッドブル」はリポビタンDの影響を受け、成分の参考にしたと言われる。国内シェアでは今なお5割を超え、発売以来50年間トップに君臨。東南アジアなどでも、果汁やハーブ、炭酸入りなど国ごとに味を変えるなどの工夫で、いずれもロングセラーとなっている。


デニム生地
国内生産にこだわり アパレルから高い信頼

海外進出年:1976年(台湾に輸出)、価格:6~9ドル(471~707円、米国、1ヤード)、販売国・地域:欧米、中国など(写真:竹井 俊晴)

 ラルフ・ローレンやPRPS、Nudie Jeansなど、高級ジーンズを手がける欧米のアパレルメーカーが頼るのが、広島県に本社を構えるカイハラのデニム生地。創業は1893年。もともとは備後絣を生産していた。そのノウハウを生かして1970年に日本で初めてのデニム生地の生産に着手。91年には生地の一貫生産体制を完成させている。その品質は高く、ジーンズの価値を左右する微妙な色落ちまで計算して作られている。

 広島県内に4カ所の工場を構え、「メード・イン・ジャパン」を貫く。生産コストの高い日本で生産を続ける苦労は並大抵ではない。原料高や円高など苦境も襲う。それでも「コストダウンさえできれば、まだまだ当社のマーケットは拡大する」と貝原良治会長は自信を見せている。


MUJI
中国の人気テナントへ どこでも「MUJI」流貫く

海外進出年:1991年(ロンドンに出店)、価格:490元(中国、超音波アロマディフューザー、約6125円)、進出国・地域:欧州、米国、アジア

 21カ国・地域に176店の「無印良品(MUJI)」を展開する良品計画は2011年末、売れ筋商品「アロマディフューザー」の販売コンクールを世界を含めた全店舗を対象に開催した。トップに立ったのは、日本の店舗ではなく中国・北京にある西端店だった。MUJIは今、中国のショッピングセンターが出店を熱望する人気ブランドとして知られる。

 海外と日本の店舗で販売している商品のデザインは同一だという。「どこの国・地域でも、当社の思想を受け入れてくれる人はいる」と松崎暁・常務取締役は言う。近年では情報システムの共通化も進めて海外展開を加速させている。


TENGA
デザインで市民権 著名デザイナーと協業

海外進出年:2005年(タイ)、価格:11ドル(約860円、米国)、販売国・地域:アジアや米国、欧州など40

 グローバル企業の高級車やデジタルカメラなどと肩を並べ、世界最大級のデザイン賞「レッドドット・デザイン賞 プロダクトデザイン2012」を受賞。米有名誌で取り上げられ、世界40カ国で販売。エイズで死亡した伝説のアーティスト、キース・ヘリングとコラボレーションし、10月20日からセレクトショップ「ビームスT 原宿」で扱われる商品は?

 答えは「TENGA」。男性の自慰行為用グッズだが、デザインにいやらしさは全くない。衝動的な性行為を防ぎHIV(エイズウイルス)感染予防につなげるという、タイ赤十字エイズ研究センターの調査にも製品を提供。国内の一部コンビニエンスストアで販売が始まった。医療研究や、身体障害者の性問題の解決にも取り組む。


ユニクロ
日本発カジュアル衣料 高機能で頂点目指す

海外進出年:2001年(英国に出店)、価格:14.9ドル(約1170円、女性向けクルーネックタイプのヒートテックの米国での販売価格)、販売国・地域:米国、中国など11(写真:時事通信)

 発熱保温肌着「ヒートテック」などのヒットを飛ばし、日本の衣料品市場を席巻してきたユニクロの海外展開が加速している。海外進出は2001年の英国からだが、当初は苦戦を強いられた。2006年に米ニューヨークのソーホー地区といったファッションの最先端地区に店を開いて話題となり、著名な海外デザイナーと契約するなどして知名度を高め、海外事業を拡大してきた。現在は11の国・地域に約300店舗を展開。今後は米国の西海岸にも出店を計画するなど、高成長が続くアジアに加えて欧米での事業拡大を図る。

 保温性や通気性などの機能を前面に打ち出し、ファストファッションのグローバルブランドとして知られるライバルたちとは一線を画す。日本発のブランドが、世界の頂点に立つことができるか。


コンビニエンスストア
日本で驚異の進化 海外店舗は4万店超に

発売・進出年:1989年(セブン-イレブン・ジャパン)、 92年(ファミリーマート)、96年(ローソン) 価格:1万2000ルピア(約98円、インドネシアのローソンでのナシゴレンの価格)、1万ドン(約37円、ベトナムのファミリーマートでのOMUSUBI FRIED PORK PATEの価格) 進出国・地域:15(セブン-イレブン・ジャパン)、2(ローソン)、6(ファミリーマート)(写真上左:町川秀人、下:大池直人)

 日本の大手コンビニ3社の海外出店数は4万5000店超。進出国・地域は16に及ぶ。米国発祥のコンビニが日本で進化したのは、「客の立場に立ってニーズを把握し、変化に対応してきた」(セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長)からだ。それを実現するため最新の小売りノウハウを詰め込んできた。競争力の高さからコンビニ脅威論も出るが「コンビニのフランチャイズビジネスは新興国の中小小売店の繁栄にもつながる」とファミリーマートの木暮剛彦・執行役員は言う。


100円ショップ
海を渡った「百均」文化 品質と品揃えで支持拡大

海外進出年:2001年(海外初出店、台湾)、価格:1.5ドル(約117円、米国)、10元(約123円、中国)、進出国・地域:中国、米国など28(写真:共同通信)

 「10元ショップ」「1.5ドルショップ」――。100円均一ショップ最大手の大創産業は今年3月、米ロサンゼルスに店を開いた。6月には中国本土にも初進出を果たすなど28の国と地域に658店舗を展開する。米国では商品の均一価格は「1.5ドル(約117円)」で、日本より1割程度高い。現地には昔から「1ドルショップ」という均一価格の店が多いが、「1ドルショップよりも品質が良く壊れにくい。さらに、品数の種類が圧倒的に多い」と来店客から支持されている。中国では10元(約123円)の均一価格で展開し、1万点の商品を揃える。食品以外は日本とほぼ同じ商品を並べ、地場の均一価格ショップよりも質の高い商品を揃える。日本が育んだ「百均」文化が、世界で花を開かせようとしている。


ヤマハ音楽教室
サービス輸出の先駆者 世界中で同じ歌うたう

海外進出年:1965年(米国)、価格:6300円(日本の幼児科レッスン料・月額・施設費別途、海外は国によって異なる)、進出国・地域:40以上

 楽器や音楽はマンツーマンで教えるもの。そんな常識を覆し、半世紀前からグループレッスンを世界各国で展開しているのが「ヤマハ音楽教室」だ。1965年に米国に教室を開設し、70年代には進出国は既に30カ国以上に達していた。

 同教室の目的は単なる楽器の練習ではない。音楽を総合的に習得し、最終的に音楽で自分を表現することをゴールとしている。教材を国によって変えることもなく、歌詞の言語が違うだけ。世界中の生徒たちが、同じ歌を口ずさめるのだ。「知育を兼ねた音楽教室は他国にもあるが、人格形成まで組み込んでいるのはヤマハだけ」と海外部部長の藤山眞裕氏は胸を張る。


BOSSシリーズ
ギターヒーローが愛用 不変の製品コンセプト

海外進出年:1977年(米国)、価格:6980~1万9800円(実勢価格)、販売国・地域:紛争地域を除く全世界(写真:竹井 俊晴)

 世界中のエレキギタリストにその名を知られる日本ブランドがある。楽器製造大手、ローランドが手がけるコンパクトエフェクターシリーズ「BOSS」である。エフェクターとは、エレキギターの音色を歪ませたり、残響効果を加えたりするもので、演奏には欠かせない機材だ。同社はエフェクターが黎明期を迎えていた1977年に第1号機種を発売。高い音質や堅牢性を保ちつつ、扱いやすいデザインと価格を実現し、世界のギタリストに受け入れられた。その基本的な設計思想やデザインは今も変わっていない。累計販売台数は1350万台(日本含む)に上り、世界シェアは約30%で競合他社を引き離す。愛用するギターヒーローはジェフ・ベックやスティーブ・ヴァイなど枚挙に暇がない。


YANAGISAWA(サックス)
従業員わずか89人の 「世界3大メーカー」

 ヤマハ、仏セルマーと並ぶ「3大サックスメーカー」。世界のプレーヤーにその名を知られる「YANAGISAWA」が従業員数89人の小さい会社であることは、あまり知られていない。

海外進出年:1960年頃(米国)、価格:約26万~146万円(日本、アルトサックスの場合)、販売国・地域:ドイツ、英国、米国など約33(写真:竹井 俊晴)

 月産650本、年間7800本。世に送り出すサックスの本数は、他社に比べると圧倒的に少ない。「楽器は形を作る工業製品ではなく、『音』を創るもの。製作者の思いが如実に楽器に表れる」と柳澤管楽器(東京都板橋区)の柳澤信成社長は語る。

 日本の西洋楽器製造の歴史は、日清戦争が起こった1894年にさかのぼる。初代の柳澤徳太郎氏が軍楽隊の輸入管楽器の修理を始めたのが起こりで、この修理工房が楽器工場に変わり、日本の管楽器生産が始まった。先代の柳澤孝信氏が1951年に見よう見まねでサックスの試作をしたことが、今日のYANAGISAWAの原型となっている。「20年ぐらい前から、ようやく楽器らしいものができるようになってきた」と柳澤社長は笑う。創業100年を超える老舗の飽くなき探究心が、国内外の愛好者を魅了し続けている。


ゴルフシャフト
プロゴルファーが頼る 炭素繊維

海外進出年:2005年(米国)、価格:400ドル(約3万円、ディアマナシリーズ)、販売国・地域:米国を中心に約15

 ゴルフのスコアを上げるのに欠かせない高性能シャフト(ゴルフクラブのヘッドとグリップをつなぐ柄)。この製品で日本メーカーは高いシェアを握っていると言われる。中でも、数多くのトッププレーヤーが愛用するのが三菱レイヨン製シャフトだ。シャフトに多く使われる素材のカーボン(炭素繊維)で三菱レイヨンは世界シェア3位の地位にある。ゴルフの世界でも、日本の素材の技術は欠かせない存在になっている。



数独
日本の数独が 世界のSudokuへ

海外進出年:不明、価格:6.95ドル(約544円、左写真下の本)、販売国・地域:米国、英国など(写真:竹井 俊晴)

 数独が世界中で大ブームを巻き起こしたのは、小さなきっかけからだった。

 ニコリが出版する数独の本を手に取った外国人がのめり込み、自分で問題を作るほどに没頭。2004年、英国の新聞社に企画を持ち込んだことが転機となった。翌年以降、欧米で大ブレークを果たし、世界大会が開かれるまでに発展した。数独の名づけ親はニコリ代表の鍜治真起氏。同社は英国の雑誌やドイツの書籍などに問題を提供している。


化粧筆
上質で滑らかな使い心 地世界の女性を虜に

海外進出年:1995年(カナダの「M・A・C」と契約)、価格:96ドル(約7500円、米国、「S100フィニッシング 斜め」)、販売国・地域:米国(写真:竹井 俊晴)

 白鳳堂(広島県熊野町)は高級化粧筆で世界シェアの過半を占める。1995年にカナダの「M・A・C」(現在は米エスティローダー傘下)と契約したのを皮切りに、大手化粧品会社などに製品を納めるように。百貨店や自社店舗などで、自社ブランド製品も販売している。

 材料はヤギなどの動物の毛。先端をハサミなどでカットせず、自然な状態のものだけを使う。枝毛などを徹底的に取り除くことで、上質な使い心地を実現している。


釣り具
釣り師憧れのブランド 付加価値を特許で守る

海外進出年:1966年(米国)、価格:50~200ドル(4000~1万5000円程度、米国、ベイトキャスティングリール)、販売国・地域:欧州、米国など約100(写真:竹井 俊晴)

 米国の東南部、フロリダ州の沿海では、趣味でマグロなど大型の魚を釣り上げるために、約35万円という大型で高額なリールが愛用されている。この製品を作っているのは、実は日本メーカー1社だけ。ダイワ精工から社名変更した釣り具大手のグローブライドだ。同社の海外事業を統括する稲垣隆執行役員は言う。「世界の釣り師にとって、当社は憧れのブランドだ」。特に高級品の市場では、グローブライドと釣り具や自転車部品大手シマノの2社が高い知名度を持つ。新機能をいち早く導入し、そうした高機能部分を特許で守る。「今後は海外の熱烈な当社ファンを囲い込むような戦略も立てている」と稲垣執行役員は話す。



KUMON
海外約300万人が学習 世界で同一の教材使う

海外進出年:1974年(米ニューヨーク)、価格:月額32万ルピア(約2600円、インドネシア)、進出国・地域:47

 海外進出は古く1974年。ニューヨークの日本企業駐在員の要望で始まった。転機は88年に、米アラバマ州のサミトン小学校が公文式算数を取り入れたこと。同校生徒の平均点を20点も上げたことが「サミトンの奇跡」として有名になり、世界各地へと広がった。

 現在「KUMON」は47の国と地域に展開する。公文式の学習者は既に海外の方が多く、延べ293万人(国内149万人)。海外進出がスムーズにできたのは、学校教育とは直接関係しない独自のカリキュラムを使うため。教材も基本的に言語が異なるだけで、内容は共通だ。




■訂正履歴
「ヤクルト」の項目で「年間で2002万1000本」とあったのは「1日平均で2002万1000本」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は修正済みです。 [2012年10月15日 16:00]

また「NARUTO-ナルト-」の項目で「ピエロ」とあったのは「ぴえろ」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は修正済みです。 [2012年10月19日 14:00]
日経ビジネス2012年10月15日号 52~67ページより

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