最近、企業取材をしていると、ピボットという言葉を耳にします。ピボットとは、バスケットボールで軸足を動かさずに、もう一方の足を踏み変えて方向を変える動作のことを指します。それが転じて、ビジネスの世界では、ベンチャー企業などが事業を方向転換する際に、この言葉を使うようになりました。方向転換するといっても、すべてをガラリと変えるのではなく、これまで培った資産を軸足として残し、柔軟に方向を修正していくという意味が込められています。

 私自身、学生時代にバスケをやっていたこともあり、この言葉が気に入っています。企業が事業構造を転換するうえで、とても重要なことをうまく表現していると思うからです。バスケで軸足を動かせば、反則を取られるように、ビジネスの世界でも、軸足がふらつく企業は結局、成功しません。この場合の軸足とは何か。顧客基盤や人材、技術など、一朝一夕では築けない、企業固有の資産でしょう。そして何よりも、軸足がぶれてはいけないのは、理念や志の部分だと思います。

 自分たちは誰のために仕事をしているのか。何のために起業したのか。創業の精神を忘れて、畑違いの分野に飛び移っても、成功する確率は低いでしょう。5号連続のシリーズ特集「日経ビジネス版リーダーズバイブル500」。第2弾のテーマは次世代ベンチャーです。創業間もない企業が大半ですから、事業基盤は脆弱ですが、軸足のしっかりした企業を100社選んだつもりです。読み進めていただければ、まだまだ日本も捨てたものではないことが実感できると思います。

(山川 龍雄)

日経ビジネス2012年10月8日号 1ページより目次

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