歴史教育よりも倫理や道徳の教育を徹底してほしい。中国の反日デモの様子を見て率直に思うことです。器物破損、放火、窃盗は、デモでなく犯罪です。犯罪を厳しく取り締まろうとせず、容認する姿勢は理解に苦しみます。政治や経済、外交の事情を持ち出す前に、人間として、やってはならない行為のはずです。暴徒化したのは貧困者や学生であり、中国の知識層の中には、この事態を内心、苦々しく思っている人がいます。しかし、大半は静観しているだけです。

 日系企業が受ける損害は計り知れません。物損による直接的な被害に加え、工場や店舗の稼働停止、日本製品の不買運動の影響などが懸念されます。中国で生活している在留邦人のみなさんが負う「心の傷」も気になります。これまで中国の発展に貢献しようと懸命に働いてきた人たちにとって、今回の出来事はどう映ったのか。中国で「日本語はあまり使わない方がよい」と言われた時の気持ちはどうだったのか。無念の思いや脱力感が広がっているのではないかと心配になります。

 これ以上、反日デモが拡大するようであれば、中国戦略の見直しを迫られる企業も出てくるでしょう。原発にしろ、中国にしろ、目の前のリスクに対して、あまり感情的に反応するのは避けた方がよいと思います。ただ、多くの企業にとって、中国のカントリーリスクが高まったことだけは間違いありません。今号は日中関係のほか、政治家のIT活用実態調査や新型デジタル機器を巡る世界の覇権争いなど、この秋、話題を集めそうなテーマを取り上げました。

(山川 龍雄)

日経ビジネス2012年9月24日号 1ページより目次

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