「iPhone 5」の発売で無線通信インフラ市場も拡大が見込まれる。スウェーデンに本社を置く無線通信機器の世界最大手、エリクソンのハンス・ヴェストベリCEO(最高経営責任者)に、影響を聞いた。

(写真:山本 琢磨)

 問 「iPhone 5」の発売で、高速通信規格「LTE」の市場が活気づきそうだ。

 答 世界では毎月約5200万件ずつ、携帯電話の契約数が増えており、このうち第2世代(2G)携帯電話と第3世代(3G)携帯電話が約2500万件ずつを占める。LTEは米国と韓国で普及し始めているが、毎月の純増数はまだ200万~250万件。世界でLTEが普及するのはこれからだ。新たなスマートフォン(高機能携帯電話)の発売が消費者の行動を変化させるのは間違いない。

 エリクソンはLTEの無線通信インフラ市場で現在60%超の世界シェアを持っている。日本ではソフトバンクをはじめ、多くの通信事業者と取引関係にあり、当社にとって世界で2番目に大きな市場だ。

 日本の顧客企業は先端技術への関心が高く、販売面だけでなく技術革新の面でも重要性が高い。日本市場でこれから起きる変化に注目している。

 問 無線通信インフラ市場の今後の見通しは。

 答 世界のモバイルブロードバンド(高速大容量)通信サービスの契約数は現在の約10億件から2017年には50億件に増え、現在の約3倍の人々が無線を通じてインターネットを利用するようになる。こうした需要に対応するため、3G携帯電話の人口カバー率は同じ時期に30%から85%に、LTEの人口カバー率は数%から50%程度まで伸びると見込んでいる。

 2020年にはスマホやパソコンだけでなく家電や生産設備なども含む500億台のデバイスがネットワークにつながる「ネットワーク化社会」が到来し、モバイルブロードバンドの普及が社会全体に大きな変化をもたらすようになる。この変化を支えるのが当社の役目だ。

 問 今年2月にソニーとの合弁を解消し、携帯電話端末事業から撤退した理由は。

 答 2001年当時、両社の端末事業は苦境に陥っていたが、合弁によって収益を好転させることができた。我々は当初、端末をネットワークの延長にあるものと捉え、ネットワーク技術によって様々な技術革新をリードできると考えていた。

 しかし、スマホが普及するようになると、端末は外観をどうデザインするかだけが重要な、全くの消費者向け商品になった。このことが、ソニーとの合弁を解消し端末事業から距離を置くことを決断した大きな理由だ。

 エリクソンは長年にわたって電話機を作り続けてきた歴史がある。今回の撤退は感情的には非常に厳しい決断だったが、戦略的には正しかった。

日経ビジネス2012年9月24日号 15ページより目次

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