ビックカメラとユニクロが“共同店”を出店する。店名は「ビックロ」。両ブランド名を掛け合わせて誕生した。「お祭り騒ぎ」の出店で、家電の苦境を跳ね返せるか。

ビックカメラ新宿東口新店は「ビックロ」に。宮嶋宏幸ビックカメラ社長(写真上の左)と柳井正ファーストリテイリング会長兼社長(同右)(写真下:Natsuki Sakai/アフロ)

 「(この短期間に)3回もセールをやるなんて、ビックカメラさんはさすが商売人だと思いますよ」

 ユニクロを展開する衣料品大手ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、9月11日に行われた家電量販店大手ビックカメラとの共同会見で、同社について開口一番こう評した。

 この会見で、両社はビックの既存店「新宿東口新店」を「ビックロ」としてリニューアルオープンすると発表した。ビックのフロアでユニクロ商品の一部を販売するなど共同運営する。9月27日のオープンに当たっては、新宿駅内外の至る所に広告を出すほか、山手線の一部電車を「ビックロ号」にしたり、東京都内の「ちんどん屋」を総動員して街を練り歩かせるなど、まさにお祭り騒ぎの開店となりそうだ。

 さらにビックは改装の前後でセールを実施する計画だという。同社は新宿東口新店を開店した今年7月にもセールを開催したばかり。開店から3カ月足らずで、計3回のセールを連発するわけだ。

 昨年に終了したエコポイント制度や地上デジタル放送への移行に伴う特需の反動で、業界は需要不足に悩まされている。宮嶋宏幸社長は会見で「客足は回復しつつあるものの、依然として業界は厳しい。今回のようなコラボレーションで来店客数を高めたい」と語る。

家電だけでは成長が困難に

 ユニクロと融合したブランド展開や「お祭り騒ぎ」のリニューアルオープン、そしてセールの連発などを仕掛けるビックカメラ。その背景には、どんな手を使ってでも集客につなげたいという苦しい胸の内が透けて見える。

 店舗名はその象徴だ。新宿東口新店の建物は三越伊勢丹ホールディングスからビックが一括で借り上げており、ユニクロは同社のテナントにすぎない。だがビックは店の看板を替え「共同出店」という形を取ってまで、彼らの集客力に期待をかける。

 さらに「ビックロ」では、同店限定でビックの買い物でたまる「ビックポイント」をユニクロで使えるクーポンに交換する。その比率は協議中だが、1000ポイントを800円程度のクーポンにするなど交換レートは抑える方向で検討している。

 もともと家電量販店のポイントは、消費者にもう一度、来店してもらうための仕掛けだった。それを他店で使えるようにしてしまうのは、自社の費用で他店のチラシを出すようなもの。ビックは自社の経費で出したポイントがユニクロに流れてしまっても、新店の集客に努めようとしているわけだ。

 もっとも、入居するテナントのクーポンを発行しているのはビックだけではない。駅前型店舗でビックと激突するヨドバシカメラも昨年から、自社ポイントを同じ建物に入居する飲食店や書店、衣料品店などで使えるようにした。家電量販の主力商品である薄型テレビが落ち込んだ今、もはや家電だけでの成長はおぼつかないとする見方は業界に共通している。

 ビックは、早くから「専門店の集合体」をうたい、薬や自転車、酒類などを扱ってきた。今回のような、なりふり構わぬ集客策が功を奏せば、今後、家電量販業界で異業種との踏み込んだ連携が加速する可能性もある。

(中川 雅之、飯山 辰之介)

日経ビジネス2012年9月24日号 20ページより目次

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