値札が内税表示のため消費税率が分かりづらい(写真はイメージ)(写真:アフロ)

 消費増税を柱とした社会保障と税の一体改革関連法案が8月に成立した。消費税は今後、2014年4月から8%に、そして2015年10月からは10%に引き上げられる。この増税に、私はいくつかの懸念を覚えている。

 私が属する中小企業家同友会では、増税法案の可決後、下請け企業への値下げ圧力を心配する声が高まっている。

 その原因の1つが内税表示だ。2004年以降、商品の値札や広告などに、消費税を含む総額表示が義務づけられた。しかし、店頭では売りやすい価格というものがある。食料品なら98円、198円、298円がそれだ。例えば、キャベツの値段が210円と198円では、売れ方が圧倒的に違う。210円と比べて198円は、消費者が実際の値段差以上に値頃感を感じるからだ。この傾向は消費税率が現行の5%から、8%や10%に増えても変わらないはずだ。

 そうなると、小売業では売りやすい価格のまま値付けを据え置くことになるだろう。増えた消費税分と粗利を確保するには、仕入れ値を抑えざるを得ない。つまり、農業生産者や製造側の卸値が下がる懸念があるのだ。

 私は決して消費税増税に反対ではない。だが、それによってサプライチェーンの最も川上にある製造者にしわ寄せが来るならば、何らかの対策が必要になる。それが、消費税の外税表示だ。

 店頭価格が同じ98円でも、外税表示にすれば小売業や製造業が不利益を被ることはない。消費者も、税金を支払う意識が今以上に高まるだろう。

不平等感が強い低所得者対策

 もう1つ、疑問に感じているのが、増税法案の中で議論されている低所得者対策である。現在では低所得者に対して、減税と現金支給を組み合わせた給付付き税額控除をすべきではないかと検討されている。

 だがそもそも、消費税は富の多寡などを問わず、消費に対してあまねく課税されるものであろう。検討されている低所得者対策は、消費税の原理原則に反する対策ではないか。

 つい最近、生活保護費の不正受給が社会問題となった。弱者保護対策は当然必要ではあるが、それが過分に手厚くなると不平等感は高まり、国民の労働意欲はそがれてしまう。増税後の弱者対策も、この悪しき風潮を後押しするようなものであってはならない。

 低所得者の最低限の生活を保護するなら、別の方法がある。私は最低限の生活を支える食料品とエネルギーを、増税の対象外とすべきだと考えている。

 例えば消費税発祥の地、フランスでは課税率が19.6%と高い。だが食料品などは軽減税率として5.5%、医療医薬品なども特別軽減税率2.1%にとどめられている。たとえ消費税が高くとも、最低限の生活を支える買い物は税額を抑え、低所得者に配慮しているのだ。フランス以外でも、同じような考えで消費税率を項目ごとに変える国は多い。これなら生活保護費の不正受給のような不平等感もない。何より全国民が恩恵を受けられるのだから、メリットは大きいはずだ。

 深刻化する少子高齢化や東日本大震災からの復興、新しいエネルギー政策など、日本の現状を鑑みると消費税の増税は避けては通れない。税の改正法案が通過した今だからこそ、そのあり方については再び議論がなされるべきだ。特定の企業や業種、所得層だけがしわ寄せを被ったり、恩恵を受けたりするあり方は正しくない。公平性が担保される消費税のあり方を問い直すべきではないか。

澤浦 彰治(さわうら・しょうじ)氏
澤浦 彰治(さわうら・しょうじ)氏 1964年群馬県昭和村生まれ。高校卒業後、家業の農家を継ぐ。92年に有機野菜生産グループを立ち上げるなど、早くから大規模栽培に取り組んできた。


日経ビジネス2012年9月17日号 154ページより目次