ファイザーは700人以上のMR(医療情報担当者)をエスタブリッシュ医薬品部門に異動させ、自社の特許切れ新薬や後発医薬品の営業を強化している(写真:丸毛 透)

 「苦節何十年、『今こそ、おいしい思いがしたい』と思う企業も多いのでないか」。後発医薬品大手、沢井製薬の澤井光郎社長はそう語る。後発医薬品は新薬に比べて薬価は半額程度と安い。その利用を促進して薬剤費を圧縮したい国は、2002年から病院と調剤薬局双方に対して後発医薬品の使用に経済的なインセンティブを与え始め、市場拡大の原動力となった。その恩恵に今、多くの企業が浴している。

 近年は日医工や沢井製薬、東和薬品といった既存の後発医薬品専業メーカーはもちろん、新薬を手がける大手メーカーから後発医薬品専業の外資系大手まで、幅広い顔ぶれが参入している。新薬メーカーのファイザーは自社の特許切れ新薬と後発医薬品をエスタブリッシュ医薬品部門にまとめ、事業強化を図った。700人を超えるMR(医薬情報担当者)を擁し、今年8月には後発医薬品世界3位の米マイランと日本で業務提携した。

 医療費抑制の旗印の下で生まれた「後発医薬品の春」。だが、厳しい時代の訪れはすぐそこまで迫っている。

 今年6月には「ニューロタン」「パキシル」「マイスリー」という3つの特許切れ大型新薬と同じ有効成分を持つ後発医薬品が一斉に発売された。手がけるメーカー数は30社に上る。ただ、医薬品は2年に1回の薬価改定で価格が引き下げられる運命にある。2014年の改定までは新薬の6割程度が維持されるが、その先は急激に引き下げられていく。「今後はさらに厳しいコスト競争が始まる」(澤井社長)と企業は身構える。

 2017~18年には更なる試練が訪れる。この年に大型新薬の特許切れが一巡し、その数が大幅に減る。「後発品バブル」は終わりを迎えるわけだ。新薬の種が減少する一方、薬価は確実に低下する。新薬メーカーを悩ませた「2010年問題」が後発医薬品の分野でも遅れてやってくる。

 生き残るメーカーは数社程度と言われる。それまでにコスト競争に耐えられる体制を作るのか、あるいは今後主流になるバイオ医薬品の後発品(バイオシミラー)開発に乗り出すのか、後発医薬品メーカーの戦略が問われている。もっとも、バイオシミラーの開発には1製品当たり50億~100億円程度のコストがかかるとされる。売上高が大手でも1000億円に満たない日本の専業メーカーにとっては、難しい決断を迫られることになる。

日経ビジネス2012年9月3日号 33ページより

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