米ファイザーが後発医薬品世界3位メーカーと日本で提携。成長が見込まれる国内後発薬市場で事業拡大を図る。待つのは後発薬のコモディティー化と熾烈なコスト競争か。

8月23日に行われた提携会見で両社首脳は相乗効果をアピールした

 「成長市場が外資に蚕食されかねない」。国内大手製薬企業の幹部は、警戒感をあらわにする。

 8月23日、製薬世界最大手の米ファイザーと後発医薬品(ジェネリック医薬品)世界3位の米マイランは日本での後発医薬品事業で業務提携すると発表した。マイランは開発・製造に特化し、ファイザーがマーケティング・販売を担う。

 日本の後発医薬品市場には、既に多くの海外専業メーカーが参入している。2000年代後半から世界最大手のテバファーマスーティカル・インダストリーズが国内後発医薬品メーカーを相次いで買収。マイランも2007年に独メルクの後発医薬品部門を買収し、併せて日本法人を傘下に収めた。だが、国内の後発医薬品メーカーの本音は「外資はそれほど脅威でない」というものだった。

 「日本は他国と比べてブランド志向が強い」とファイザーのエスタブリッシュ医薬品事業部門プレジデント、アルバート・ブーラ氏は指摘する。日本の医師や薬剤師は聞き慣れない海外メーカー製の後発医薬品を使うよりも、実績があるメーカーの医薬品を好んで使う傾向がある。彼らに薬を提供する医薬品卸には、国内の新薬、後発医薬品専業メーカーの双方がこぞって関係強化に動いている。外資系メーカーが日本市場に食い込むハードルは高かった。メーカー関係者は「国内勢に比べて営業力やブランド力で見劣りしていた」と言う。

 一方のファイザーにも弱点があった。営業力やブランド力は高いものの、新薬開発に注力してきた経緯から、後発医薬品の品揃えが少ないことだ。

 同社の「ノルバスク」や「リピトール」といった大型新薬は相次いで特許切れを迎え、他社の後発医薬品の攻勢に晒されている。そこで自社の新薬を守りつつ、自らも後発医薬品を手がけるエスタブリッシュ医薬品事業部門を日本では2009年に創設。700人以上の営業担当者をこの部門に配置した。だが現在の後発医薬品の品揃えは58品目程度で、500品目以上を揃える専業メーカーとは大きな差があった。「自前で(後発医薬品を)揃えていては遅い」(ブーラ氏)。マイランは340品目の品揃えを持ち、125品目を新たに開発中。国内に生産拠点もある。手を組む相手としては理想的だった。

 今回の提携で両社は強力な営業力・ブランド力と品揃えを兼ね備えた存在として急浮上することになった。マイランからは出向で約200人がファイザーの営業部隊に加わるので、1000人近い陣容になる。一概に比較できないが、例えば第一三共グループでは、同分野の専門営業担当者は約80人だ。

外資の提携で高まる再編機運

 米国に本社を置く両社が今回、「日本市場のみ」という特異な提携に至ったのは、この国の市場拡大が確実視されているからだ。

 日本は米国に次ぐ世界第2位の医薬品市場を持つ。だが後発医薬品の普及率は約23%(2011年度、数量ベース)と欧米に比べ大きく出遅れ、政府は利用促進を国策として掲げる。外資からすれば、日本は成長性の高い「後発医薬品の新興国」に映る。

 国内で流通する後発薬の多くは国内生産。だが、ファイザー・マイラン連合にコストの安い海外生産の医薬品を持ち込むことへの躊躇はない。世界大手が「規模の経済」を前面に打ち出してきた時、国内勢はどう立ち向かうのか。再編への猶予はいよいよ少ない。

(飯山 辰之介、広岡 延隆)

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日経ビジネス2012年9月3日号 18ページより目次

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